自己資本比率
Equity Ratio ・ じこしほんひりつ
総資産のうち返済不要の自己資本が占める割合で、財務の安全性を測る指標
概要
自己資本比率は、会社の総資産のうち、返済不要の純資産(自己資本)が占める割合を示す指標です。貸借対照表の右側は資金の調達源泉を表しており、返済義務のある負債と、返済不要の自己資本の二つから成ります。このうち自己資本の割合が高いほど、借金への依存が小さく、倒産しにくい財務体質だといえます。計算式は「自己資本 ÷ 総資産」です。
自己資本は「返さなくてよいお金」であると同時に、損失を吸収するクッションでもあります。事業で損失が出ると、まず自己資本が削られます。自己資本が厚ければ多少の赤字にも耐えられますが、薄ければすぐに債務超過(負債が資産を上回る状態)に転落します。自己資本比率は、このクッションの厚みを一目で示す、財務の安全性分析の中心指標です。
銀行の融資審査、取引先の与信判断、就職先の安定性の確認まで、「この会社は潰れないか」を測りたいあらゆる場面で参照されます。長期の安全性を見るこの指標と、短期の支払い能力を見る流動比率を組み合わせるのが、安全性分析の基本形です。
なぜ生まれたか
掛け取引や融資が経済の血流である以上、「相手が返せなくなるリスク」を事前に見積もる技術が常に求められてきました。しかし貸借対照表を眺めるだけでは、負債1000億円が危険なのかどうかは規模次第で判断できません。そこで、負債と自己資本のバランスを規模によらない比率に直し、企業間・時系列で比較可能にしたのが自己資本比率です。損失が出たときにどこまで耐えられるかという「バッファの厚み」を一つの数字に凝縮したことで、与信・融資の実務における共通言語になりました。
もう一つの背景は、レバレッジ(借入によるリターン増幅)との緊張関係です。借入を増やすほど株主のリターンは高まり得ますが、その分だけ倒産リスクも高まります。攻め(資本効率)と守り(財務安全性)のトレードオフを議論するには、守りの側を定量化する物差しが必要でした。自己資本比率はその役割を担い、経営の資本政策を語るうえで欠かせない指標になっています。
詳細
貸借対照表の右側を読む
自己資本比率は、貸借対照表の右側(調達源泉)の構成比そのものです。同じ総資産100の会社でも、自己資本が60の会社と20の会社とでは、損失への耐久力がまったく違います。
A社は資産の6割を返済不要の資金で賄っているため、大きな損失が出ても自己資本が吸収します。B社は8割を借入等に頼っており、総資産の2割の損失で自己資本が尽き、債務超過に陥ります。債務超過は融資の引き揚げや上場廃止基準への抵触につながる危険水域であり、そこまでの距離を測るのが自己資本比率です。
何%なら安全か
一般には、自己資本比率が高いほど安全です。ただし絶対的な合格ラインはなく、業種特性が大きく影響します。多額の設備を借入で賄うのが通常のインフラ・不動産業や、預金という負債で資金を集めることが本業の銀行業は、構造的に低くなります。逆に大きな資産を必要としないサービス業は高めに出ます。したがって評価は同業他社との比較と自社の時系列で行うのが原則です。また、比率の悪化が「損失による自己資本の毀損」なのか「成長投資のための借入増加」なのかで意味はまったく違うため、変化の理由まで踏み込んで読むことが大切です。
高ければ高いほど良いのか — レバレッジとのトレードオフ
自己資本比率は安全性の指標であって、経営の総合点ではありません。借入には、自己資本より調達コストが低く、支払利息が税務上損金になるという利点があります。自己資本比率を極端に高く保つことは、この安価な資金を使わず、株主の資本だけで事業を賄うことを意味し、資本効率の指標である ROE を押し下げます。実際、財務レバレッジ(総資産 ÷ 自己資本)は自己資本比率の逆数であり、二つの指標はシーソーの関係にあります。
つまり経営には「守りの自己資本比率」と「攻めの ROE」の均衡点を探る仕事があり、無借金経営が常に正解とは限りません。事業のリスクが高い(収益の変動が大きい)ほど厚いクッションが必要で、収益が安定しているほどレバレッジを効かせる余地がある、というのが基本的な考え方です。
自己資本を厚くする方法
自己資本比率を高める道は三つあります。第一に、利益を上げて利益剰余金として社内に蓄積すること。これが王道で、日々の稼ぐ力がそのまま財務体質の強化につながります。第二に、増資によって資本金等を直接増やすこと。即効性はありますが、既存株主の持分の希薄化を伴います。第三に、分母である総資産を圧縮すること。遊休資産の売却や在庫の圧縮で借入を返済すれば、利益を増やさなくても比率は改善します。安全性の改善と資産効率の改善が同じ打ち手で実現できる点で、自己資本比率は ROA とも根でつながっているのです。
