会計・簿記の星図 — お金の記録と報告のしくみを、複式簿記の発明から辿る
何かを理解するために、先にどの語彙を知っておくとよいのか。105の語彙を、前提知識の系譜でつないだ星図です。 上の星をたどるほか、下の一覧からも各語彙の解説へ進めます。
簿記のしくみ
- 会計期間企業活動を人為的に区切って成績を測る期間。決算の前提となる約束事
- 会計等式資産=負債+純資産という、複式簿記の全体を貫く恒等式
- 勘定科目取引を分類して集計するための名前の体系。仕訳の宛先になる
- 仕訳取引を借方と貸方に分解して帳簿に記録する、複式簿記の最小単位
- 資産現金・商品・建物など企業が持つ経済的価値。借方に定位置を持つ
- 借方と貸方帳簿の左右を指す簿記の基本記号。左が借方、右が貸方で常に一致する
- 収益売上など、純資産を増やす原因となる経済的成果を表す要素
- 純資産資産から負債を引いた正味の持ち分。出資と利益の蓄積からなる
- 費用給料や家賃など、収益を得るために費やされた価値の犠牲
- 負債借入金や買掛金など、将来の返済・支払い義務を表す貸方の要素
- 複式簿記すべての取引を原因と結果の二面で記録する、会計の土台となる記録法
- 銀行勘定調整表帳簿上の預金残高と銀行残高証明のずれを原因ごとに突き合わせて調整する表
- 試算表全勘定の残高を集めて貸借の一致を確かめる、決算前の検算表
- 資本金株主が会社に払い込んだ元手のうち、会社法上の基準額として維持される純資産の中核
- 手形支払期日と金額を明記した支払約束の証券。受取手形は債権、支払手形は債務になる
- 総勘定元帳全勘定科目の口座を集めた主要簿。仕訳帳から転記され残高の源泉になる
- 棚卸資産販売目的で保有する商品・製品・材料など。期末の棚卸で数量と金額を確定する資産
- 買掛金商品や材料を掛けで仕入れ、代金を後日支払う義務。営業取引から生じる代表的な債務
- 売掛金商品やサービスを掛けで売り、代金を後日受け取る権利。営業取引から生じる代表的な債権
- 評価勘定本体の勘定から間接控除する形でマイナスを表し、取得原価と減少分を両方見せる勘定
- 補助簿現金出納帳や売掛金元帳など、特定の科目や取引を詳しく追う帳簿
- 無形固定資産特許権・ソフトウェア・のれんなど形のない長期資産。償却の考え方は固定資産に準じる
- 有価証券株式や債券など財産的価値を持つ証券。保有目的によって会計上の分類と評価が変わる
- 有形固定資産建物・機械・土地など長期間事業に使う形のある資産。減価償却の主な対象
- 引当金将来の支出や損失に備え、当期に属する分をあらかじめ費用として見積り計上する勘定
- 決算振替と帳簿の締切収益・費用を損益勘定に集めて純資産へ振り替え、帳簿を次期に引き継ぐ手続き
- 決算整理仕訳期中の記録を発生主義に合わせて修正し、当期の損益と財政状態を確定させる期末の仕訳
- 資本的支出と収益的支出固定資産への支出を資産計上するか費用処理するかの区別。利益に直結する判断
- 売上原価当期に売れた商品の仕入原価。期首在庫+仕入−期末在庫で計算される費用
- 売上総利益売上高から売上原価を差し引いた利益。商売の基礎的な稼ぐ力を示す第一段階の利益
- 法人税等会社の利益に課される法人税・住民税・事業税を費用計上し、未払分を負債に載せる処理
- 利益剰余金会社が稼いだ利益のうち配当せず社内に蓄積された部分。純資産の成長エンジン
- 流動・固定分類資産・負債を換金や支払の近さで流動・固定に分け、貸借対照表を読みやすくする区分
- 経過勘定(見越し・繰延べ)収益・費用を期間に正しく帰属させるため、期末に見越し・繰延べで計上する4つの調整勘定
- 精算表試算表から決算整理を経て損益計算書・貸借対照表へ至る流れを1枚にまとめた一覧表
- 貸倒引当金売掛金などの債権が回収不能になるリスクを見積もり、あらかじめ費用計上しておく評価勘定
- 配当利益剰余金を原資として株主に利益を分配する手続き。純資産が社外へ流出する取引
財務諸表
- 損益計算書一定期間の収益と費用から利益を段階的に示す、経営成績の報告書
- 貸借対照表ある時点の資産・負債・純資産を一枚で示す、財政状態のスナップショット
- キャッシュ・フロー計算書利益とは別に現金の増減を営業・投資・財務に分けて示す計算書
- 営業利益売上総利益から販売費及び一般管理費を引いた、本業の稼ぐ力を示す利益
- 株主資本等変動計算書純資産の各項目が期中にどう増減したかを示す財務諸表
- 経常利益営業利益に利息など営業外の損益を加減した、会社の経常的な収益力を示す利益
- 注記財務諸表の数字だけでは伝わらない前提や内訳を補足する説明情報
- キャッシュ・フローの直接法と間接法営業キャッシュ・フローを収支の総額で示すか、利益から調整して示すかの2つの作成法
- 当期純利益特別損益と法人税等まで反映した、株主に帰属する最終的な利益
- 包括利益当期純利益に有価証券の評価差額など資本取引以外の純資産変動を加えた利益
- 連結財務諸表親会社と子会社をひとつの組織とみなして企業グループ全体を報告する財務諸表
- セグメント情報事業や地域の区分ごとに売上・利益を開示し、グループの中身を見せる注記情報
- のれん買収価額が相手の純資産を上回った差額として計上される超過収益力の資産
- 持分法関連会社の損益を持株比率に応じて投資額に反映させる連結の簡便な手法
認識と評価
- 会計方針と継続性の原則企業が選択した会計処理の方法と、それをみだりに変えないという規律
- 継続企業の前提企業は当面存続し続けるとみなして会計処理を行うという大前提
- 取得原価主義資産を買ったときの金額で記録し続けるという評価の大原則。検証可能性が強み
- 重要性の原則金額や性質が軽微な項目には厳密な処理を求めず、簡便な扱いを認める原則
- 発生主義現金の動きではなく経済的事実の発生時点で収益・費用を認識する原則
- 会計上の見積り将来の不確実な事象を合理的に予測して測定する会計処理。引当金や耐用年数が代表例
- 外貨換算外貨建ての取引や資産・負債を円に換算するルール。為替レート変動の影響を映す
- 研究開発費の会計研究開発への支出を費用処理するか資産計上するかを定めるルール
- 減価償却固定資産の取得原価を使用期間に配分して費用化する発生主義の代表的な手続き
- 時価評価(公正価値)資産・負債を決算日の市場価格で測り直す評価アプローチ。金融商品で中心的役割
- 実現主義収益は財・サービスの提供と対価の獲得が確実になった時点で計上するという原則
- 償却原価法債券の取得価額と額面の差を満期までの各期に配分して帳簿価額を調整する方法
- 低価法棚卸資産の時価が原価を下回ったら安いほうまで帳簿価額を切り下げる評価ルール
- 費用収益対応の原則費用は関連する収益と同じ期間に計上し、期間損益を正しく測るという原則
- 払出単価の計算同じ商品を違う値段で仕入れたとき、売れた分の原価をいくらとするかの計算方法
- 保守主義利益は確実なものだけ、損失は起こりうるものまで見込むという慎重さの原則
- リース会計借り物の設備でも実質的に買ったのと同じなら資産と負債に計上する会計処理
- 減損会計収益性が落ちた固定資産の帳簿価額を回収可能な額まで切り下げる会計処理
- 収益認識収益をいつ・いくらで計上するかを定める基準。5ステップで履行義務ごとに認識する
- 税効果会計会計と税務の利益のずれを調整し、税金費用を会計上の利益に対応させる仕組み
- 退職給付会計将来支払う退職金・年金の負担を見積もり、現在の負債と費用に落とし込む会計処理
- 工事進行基準長期の工事契約で、進捗度に応じて収益を各期に配分して認識する方法
- 履行義務顧客との契約に含まれる財・サービス提供の約束。収益認識の単位となる
分析・指標
原価・管理会計
- 原価計算製品やサービスの原価を測定・集計する手続き。財務諸表作成と経営管理の両方を支える
- 変動費と固定費操業度に比例して増減する費用と、操業度によらず一定の費用という原価の分類
- 貢献利益売上高から変動費を引いた利益。固定費の回収と利益獲得への貢献分を示す
- 差額原価と埋没原価意思決定で考慮すべき原価とすでに回収不能で無視すべき原価を区別する考え方
- 製造原価製品を作るためにかかった原価。材料費・労務費・経費に分類し、直接費と間接費に分けて集計する
- 予算管理目標を予算として数値化し、実績との差異を追って経営活動を統制する仕組み
- 個別原価計算受注ごとに原価を集計する方法。製造指図書単位で直接費を賦課し間接費を配賦する
- 設備投資の意思決定長期にわたる設備投資の採否を、将来のキャッシュフローに基づいて判断する手法
- 総合原価計算同種製品の大量生産向けに、期間の総原価を生産量で割って単位原価を求める方法
- 損益分岐点分析利益がゼロになる売上高を求め、コスト構造と利益の関係を読み解く分析手法
- 配賦複数の製品に共通してかかる間接費を、一定の基準で各製品に割り振る手続き
- 標準原価計算あるべき原価をあらかじめ設定し、実際原価との差異から改善点を探る原価計算
- 活動基準原価計算間接費を活動単位で捉え、コストドライバーに基づいて製品に割り当てる精緻な配賦手法
- 差異分析標準と実際の差を価格差異・数量差異などに分解し、原因を特定して管理に活かす手法
- 正味現在価値将来キャッシュフローを現在価値に割り引き、投資の価値を金額で測る指標
制度・監査
- 受託責任とアカウンタビリティ他人の財産を預かる者が、その管理・運用の顛末を報告する義務
- コーポレート・ガバナンス株主に代わって経営者を規律づける、企業の意思決定と監督の仕組み
- 会計基準財務諸表の作成が従うべき共通ルール。比較可能性と信頼性の土台
- 開示制度投資家保護のために企業へ財務情報の公開を義務づける制度の総称
- 税務会計と確定決算主義課税所得の計算を目的とする会計と、会社の決算を出発点にする日本の仕組み
- 内部統制業務の適正と報告の信頼性を組織の仕組みとして担保する統制活動
- 会計監査独立した第三者が財務諸表の適正性を検証し、意見を表明する制度
- 国際財務報告基準国境を越えた投資のために各国の会計ルールを統一する国際基準
- 粉飾決算架空売上や損失隠しで財務諸表を意図的に偽る不正とその典型手口
- 利益マネジメント会計ルールの裁量の範囲内で利益の見え方を調整する経営行動
