簿記のしくみ●●●○○

法人税等

Income Taxesほうじんぜいとう

会社の利益に課される法人税・住民税・事業税を費用計上し、未払分を負債に載せる処理

概要

法人税等は、会社の利益に対して課される税金 — 法人税・住民税・事業税 — をまとめて呼ぶ勘定科目です。個人が所得に応じて所得税を納めるのと同じように、会社も一会計期間の儲けに応じて税金を納めます。損益計算書では末尾近くに「法人税、住民税及び事業税」として表示され、税引前当期純利益からこれを差し引いたものが最終の当期純利益になります。

会計処理としてのポイントは二つあります。一つは、税金をその利益が生まれた期の費用(正確には利益からの控除項目)として計上すること。もう一つは、決算日時点ではまだ納めていない税額を「未払法人税等」という負債として貸借対照表に載せることです。税金の申告と納付は決算日から2か月ほど後になるため、「費用は当期、支払いは翌期」というズレを帳簿の上で埋める必要があるのです。

簿記の学習では決算整理の一項目として登場しますが、実務では「会計上の利益」と「税金計算上の所得」が一致しないという奥行きのあるテーマにつながっています。本記事では、その入り口までを整理します。

なぜ生まれたか

会社の税額は、決算を締めて利益を確定させ、そこから申告書を作って初めて計算できます。つまり税金の納付は必ず決算日の後になります。もし「払った時に費用にする」という現金主義で処理すると、当期の儲けに対する税金が翌期の費用として記録されてしまい、各期の最終利益が実態からずれてしまいます。当期の利益が原因で生じた負担は当期に計上する — 発生主義の考え方をここでも貫くために、決算で税額を見積もって法人税等を計上し、未納付分を未払法人税等として負債に載せる処理が生まれました。

これは、決算日をまたぐ費用・収益のズレを調整する決算整理仕訳の一種と位置づけられます。税金という「金額が後から確定する支出」を、期間損益計算の枠組みに正しく組み込むための仕組みです。

詳細

損益計算書の中での位置

法人税等は、売上原価や販売費のような通常の費用とは区別され、損益計算書のいちばん最後に置かれます。営業活動や財務活動の成果をすべて集計した「税引前当期純利益」が先に示され、そこから法人税等を控除して「当期純利益」が導かれる構造です。税金は事業活動の巧拙とは別のルールで決まる負担なので、その手前までの利益(税引前)と最終の取り分(税引後)を分けて見せることに意味があります。最終行の当期純利益こそが、利益剰余金として純資産に積み上がり、配当の原資となる金額です。

会計の利益と税務の所得は別物

もう一つ押さえておきたいのは、法人税の計算のベースが会計上の利益そのものではないことです。税法は課税の公平や政策目的から独自のルールを持っており、会計上は費用でも税務上は認められないもの(損金不算入。交際費の一部や引当金の繰入の一部など)、逆に会計上は収益でも課税されないもの(益金不算入)があります。そこで、会計の税引前利益に申告書上で加算・減算の調整を施し、「課税所得」を計算してから税率を掛けます。会計と税務は同じ帳簿から出発しながら、目的が違うために答えが分かれる — この関係を図で確認しましょう。

会計の世界税引前当期純利益収益 − 費用目的: 経営成績の報告申告調整加算: 損金不算入減算: 益金不算入税務の世界課税所得× 税率 = 法人税等目的: 公平な課税決算で計上損益計算書の末尾へ税引前当期純利益 − 法人税等= 当期純利益会計の利益 ≠ 課税所得。同じ帳簿から出発しても目的の違いで金額は分かれる
会計の利益と税務の所得の関係 — 同じ帳簿から出発し、申告調整で分岐する

中間納付から確定申告までの流れ

法人税等の実務は、一年の中でいくつかの支払いに分かれます。多くの会社は期の途中で前年度実績などに基づく中間納付を行い、これを「仮払法人税等」という資産(前払いの権利)として記録します。決算では年間の税額を見積もって法人税等を計上し、仮払分を充当した残りを未払法人税等とします。そして決算日から原則2か月以内に確定申告を行い、未払分を納付して精算が完了します。

税務署会社税務署会社仮払法人税等として資産計上決算で年間税額を見積もり法人税等を計上差額は未払法人税等未払法人税等を取り崩して精算期中に中間申告・中間納付決算日から2か月以内に確定申告未払分を納付

仕訳の骨格はシンプルです。中間納付時が「借方 仮払法人税等 / 貸方 現金預金」、決算時が「借方 法人税等 / 貸方 仮払法人税等・未払法人税等」、納付時が「借方 未払法人税等 / 貸方 現金預金」。決算時の仕訳が、当期の負担を当期の帳簿に載せるという発生主義の要になっています。

実務での注意点と広がり

未払法人税等は、決算書の中でも見積もりの性格を持つ負債です。申告書の作成過程で税額が微修正されることは珍しくなく、決算作業では税額計算と決算数値が相互に依存する(税額は利益で決まり、税引後利益は税額で決まる)ため、税金計算は決算の締めの工程に位置します。また、消費税や固定資産税のような利益と連動しない税金は法人税等には含めず、別の科目(租税公課など)で処理する点も混同しやすいところです。

会計利益と課税所得のズレのうち、減価償却の限度超過のように「いずれ解消する一時的なズレ」を期間配分する仕組みとして、税効果会計(法人税等調整額・繰延税金資産)という発展的な領域があります。簿記の初学段階では立ち入りませんが、「会計と税務は別の体系であり、そのズレを扱う技術がある」という見取り図を持っておくと、上位級や実務へ進んだときの理解がスムーズになります。