原価・管理会計●●●●○

配賦

Cost Allocationはいふ

複数の製品に共通してかかる間接費を、一定の基準で各製品に割り振る手続き

概要

配賦は、複数の製品に共通してかかったコストを、一定の基準で各製品に割り振る手続きです。工場の家賃や電気代、機械の減価償却費は、どの製品のために発生したかを直接特定できません。しかし製品原価を計算する以上、これらのコストも何らかの形で製品に背負わせる必要があります。そこで「作業時間に比例して」「機械の稼働時間に比例して」といったもっともらしい物差し(配賦基準)を決め、その比率で割り振るのが配賦です。

製造原価のうち、特定の製品に跡付けられる直接費は「賦課」(そのまま紐付けること)で済みますが、跡付けられない製造間接費はすべて配賦を通らなければ製品にたどり着けません。工場の自動化や共通設備の増加で間接費の比重は高まり続けており、配賦の設計は現代の原価計算の精度を左右する最重要ポイントになっています。

配賦は工場の中だけの話ではありません。本社費を各事業部に負担させる、情報システム部門のコストを利用部門に振り分ける——共通コストを誰かに負担させる場面のすべてで、同じ考え方が使われます。

なぜ生まれたか

直接費だけで製品原価を計算していた時代には、配賦は大きな問題ではありませんでした。手作業中心の工場では材料費と職人の賃金が原価の大半を占め、家賃などのおまけは小さかったからです。ところが機械化が進むと、設備の減価償却費・動力費・保全費・管理者の人件費といった「どの製品のものとも言えないコスト」が膨らんでいきます。これを無視して直接費だけで原価を計算すると、原価は実態より大幅に小さく見え、売価設定を誤り、間接費の塊を誰も管理しなくなります。

かといって、間接費を「全部の製品に均等割り」するのも乱暴です。手間のかかる製品も簡単な製品も同じ負担では、原価が実態を映しません。そこで「コストの発生と関係が深い尺度に比例させて割り振る」という発想が生まれました。作業時間が長い製品ほど工場の資源を多く使っているはずだ——このような因果の推定に基づいて基準を選ぶことで、直接跡付けできないコストにも合理的な負担のさせ方を与える。これが配賦という手続きの本質です。

詳細

配賦の基本形 — プール・基準・配賦率

配賦は三つの要素で組み立てられます。第一に、割り振る対象のコストの束(コストプール。典型的には製造間接費)。第二に、割り振りの物差しである配賦基準(直接作業時間・機械運転時間・直接材料費など)。第三に、両者から計算される配賦率です。たとえば製造間接費が月100万円、工場全体の直接作業時間が500時間なら、配賦率は1時間あたり2,000円。ある製品に10時間かかったなら、その製品は2万円の間接費を負担します。式にすれば「配賦率 = 間接費総額 ÷ 基準総量」「各製品への配賦額 = 配賦率 × 各製品の基準消費量」という単純な比例配分です。

製造間接費プール家賃・電気代・減価償却費月 100万円配賦基準直接作業時間 計500時間配賦率 2,000円/時間製品A 250時間負担 50万円製品B 150時間負担 30万円製品C 100時間負担 20万円基準の消費量に比例して負担額が決まる — 基準を変えれば同じ間接費でも配分は変わる
配賦の構造 — 間接費のプールを配賦基準の比率で各製品に割り振る

配賦基準の選び方 — 因果関係が第一

配賦基準の選択に唯一の正解はありませんが、指導原理は明確で、「そのコストの発生と最も因果関係の強い尺度を選ぶ」ことです。人手中心の工程なら直接作業時間、機械中心の工程なら機械運転時間、材料の取り扱いコストなら材料費や重量が候補になります。因果関係の薄い基準を選ぶと、間接費をあまり使っていない製品が過大に負担し、多く使っている製品が過小に済む「原価の内部補助」が起き、製品別の採算判断を誤らせます。この歪みへの本格的な処方箋として、活動単位で因果を細かく追いかける活動基準原価計算(ABC)が生まれました。ABCは「配賦基準をコスト・ドライバー(原価を発生させる要因)まで精緻化した配賦」と位置づけられます。

部門別配賦 — 二段階で精度を上げる

工場全体でひとつの配賦率を使う方法(総括配賦)は簡便ですが、工程ごとにコスト構造が違う工場では粗すぎます。そこで実務では、間接費をまず部門(切削・組立などの製造部門と、動力・修繕などの補助部門)に集計し、補助部門のコストをサービス提供量に応じて製造部門へ振り替えたうえで、部門ごとの配賦率で製品に配賦する二段階方式が使われます。機械が主役の部門は機械時間で、人が主役の部門は作業時間で、と部門ごとに適切な基準を選べるため、精度が上がります。

予定配賦 — 実際額を待たない工夫

実際に発生した間接費を月末に集計してから配賦する(実際配賦)と、原価の計算が月末まで確定せず、しかも季節要因や操業度の変動で同じ製品の原価が月ごとにぶれてしまいます。そこで実務では、年間の予算から配賦率をあらかじめ決めておく予定配賦が広く使われます。期中は予定配賦率で素早く原価を計算し、期末に実際発生額との差(配賦差異)を把握して調整します。この差異は操業度の見込み違いや間接費の使いすぎを映す信号でもあり、標準原価計算差異分析と同じ発想で原価管理に活用されます。

落とし穴 — 配賦された原価で意思決定を誤らない

配賦の最大の落とし穴は、割り振られた原価を「その製品をやめれば消えるコスト」と誤読することです。製品Cが配賦後の計算で赤字に見えても、Cをやめたところで工場の家賃や減価償却費は消えず、同じ間接費を残りの製品がより重く負担するだけ——結果として全体の利益はむしろ悪化することがあります。配賦はあくまで共通コストを「負担させる」手続きであり、コストの発生そのものを製品別に切り分けたわけではありません。製品の継続・撤退のような意思決定では、配賦後の全部原価ではなく、その決定で実際に増減するコストを見る必要があります。配賦計算の結果と、意思決定に使ってよい数字は別物だ——これが配賦を扱ううえで最も重要な心得です。