評価勘定
Contra Account ・ ひょうかかんじょう
本体の勘定から間接控除する形でマイナスを表し、取得原価と減少分を両方見せる勘定
概要
評価勘定は、ある勘定の金額を直接減らす代わりに、「マイナス専用の別勘定」を用意して間接的に控除する仕組みです。代表例は減価償却累計額です。建物の価値が減価償却で目減りしても、建物勘定の金額そのものは取得したときの原価のまま動かさず、「減価償却累計額」という別の勘定にマイナス分を積み上げていきます。帳簿上の実質的な価値(帳簿価額)は「建物 − 減価償却累計額」という引き算で求めます。
もう一つの代表例が貸倒引当金です。売掛金のうち回収できそうにない見積り分を、売掛金勘定を直接減らさずに貸倒引当金という控除勘定で表します。どちらも共通するのは「本体の金額は残したまま、減少分だけを別枠で見せる」という発想です。
一見まわりくどい方法ですが、この間接控除の形式には「元の金額」と「減った分」の両方を帳簿に残せるという明確な利点があり、貸借対照表の表示にもそのまま活かされています。
なぜ生まれたか
素直に考えれば、建物の価値が減ったら建物勘定を直接減らせばよいはずです(これを直接法と呼びます)。しかし直接法で何年も償却を続けると、帳簿に残るのは「償却後の残額」だけになり、「この建物はもともといくらで買ったのか」「これまでにどれだけ償却が進んだのか」という情報が帳簿から消えてしまいます。買ってから間もない設備なのか、償却がほぼ終わった老朽設備なのかは、残額だけを見ても区別がつきません。
そこで、本体の勘定は取得原価のまま保存し、減少分を専用の勘定に別立てで蓄積する間接法が考え出されました。こうすれば「取得原価」「累計の減少分」「差引の帳簿価額」という三つの情報がすべて帳簿から読み取れます。取得原価という客観的な事実の記録を守りながら、価値の減少という見積りを重ねて表現する — 評価勘定は、事実と見積りを別々の勘定に分けて管理するための工夫として生まれたのです。
詳細
直接法と間接法の違い
たとえば取得原価1,000万円の建物を、毎年100万円ずつ償却していく場合を考えます。直接法では毎年、建物勘定の貸方に100万円を記入して残高を直接減らします。3年後の帳簿には「建物 700万円」としか残りません。間接法では、建物勘定は1,000万円のまま動かさず、貸方記入の相手を「減価償却累計額」という評価勘定にします。3年後の帳簿には「建物 1,000万円」と「減価償却累計額 300万円」が並び、差引700万円が帳簿価額だと分かります。
貸借の位置は「本体の逆」
評価勘定の勘定科目としての特徴は、本体と逆側に残高を持つことです。建物や売掛金は資産なので借方(左)が定位置ですが、減価償却累計額や貸倒引当金は資産のマイナスを表すため、貸方(右)に残高が立ちます。「資産のグループに属しているのに貸方残高」という一見奇妙な性質こそが評価勘定の目印で、英語で contra account(反対の勘定)と呼ばれるのもこのためです。
貸借対照表での見せ方
評価勘定は貸借対照表の表示にも直結します。間接控除方式では、資産の部に「建物 1,000 / 減価償却累計額 △300 / 差引 700」のように三行で表示し、読み手に取得原価と償却の進捗を開示します。実務では差引後の金額だけを本体に載せ、累計額を注記に回す表示も認められていますが、いずれにせよ帳簿の中では本体と評価勘定が別々に管理されているからこそ、どちらの表示も選べるわけです。
見積りを本体から切り離す意味
評価勘定のもう一つの本質は、「確定した事実」と「見積り」を分離することです。売掛金の残高は取引先への請求額という事実ですが、そのうちいくら貸し倒れるかはあくまで見積りです。見積りで本体の記録を書き換えてしまうと、後から見積りを修正するたびに事実の記録が汚れていきます。評価勘定に切り出しておけば、見積りの修正は評価勘定の増減だけで完結し、本体の記録はきれいなまま保たれます。減価償却累計額も同じで、耐用年数という見積りに基づく計算を、取得原価という事実から分離しているのです。
なお、評価勘定は資産側だけのものではありません。考え方としては「本体勘定の逆側に残高を持ち、本体から控除して表示する勘定」全般を指し、簿記の学習ではまず減価償却累計額と貸倒引当金という資産の評価勘定を押さえておけば十分です。この二つを通じて「金額を直接減らさずにマイナスを別枠で見せる」という発想に慣れておくと、貸借対照表の控除形式の表示がすっと読めるようになります。
