財務諸表●●●●○

連結財務諸表

Consolidated Financial Statementsれんけつざいむしょひょう

親会社と子会社をひとつの組織とみなして企業グループ全体を報告する財務諸表

概要

連結財務諸表は、親会社とその支配下にある子会社群を、法律上は別々の会社であっても経済的にはひとつの組織とみなして作る財務諸表です。親会社単独の貸借対照表損益計算書(個別財務諸表)に対して、グループ全体の財政状態と経営成績をひとまとめに示します。現代の上場企業の決算報告は連結が主役で、「トヨタの売上高」「ソニーの利益」として報道される数字は、ほぼ例外なく連結の数字です。

連結の本質は「足し算してから、内輪の取引を消す」ことにあります。親子の財務諸表を単純に合算しただけでは、親会社から子会社への販売、親子間の貸し借り、親会社が持つ子会社株式などが二重に計上されてしまいます。グループを一社とみなすなら、グループ内部でのやり取りは「自分の右手から左手にお金を移した」のと同じで、外部との取引ではありません。これらを相殺消去して、グループと外部世界との取引だけを残したものが連結財務諸表です。

連結の対象になるかどうかは、株式の過半数保有などによる「支配」の有無で決まります。支配には至らないが重要な影響力を持つ関連会社(おおむね議決権の20%以上を保有する会社など)は、合算はせずに持分法という簡便な方法で取り込みます。

なぜ生まれたか

会社の大規模化とともに、事業を子会社に分けて営む経営形態が一般化すると、個別財務諸表だけでは実態が見えなくなるという問題が生じました。極端な例を考えると分かりやすいでしょう。親会社が在庫を子会社に「販売」すれば、実際にはグループの外に何も売れていなくても、親会社の個別損益計算書には売上と利益が立ちます。不採算事業や借金を子会社に移せば、親会社単独の決算は見かけ上きれいになります。個別決算しか開示されない世界では、子会社を使った利益操作や損失隠しが構造的に可能でした。

この抜け道を塞ぐ答えが、法人格の壁を無視して経済的な一体性で報告する連結財務諸表です。米国では20世紀初頭の持株会社の発達とともに早くから定着しましたが、日本では長らく個別決算が主でした。転機となったのは、子会社に損失を付け替える「飛ばし」が相次いで発覚した1990年代の金融危機で、これを受けた会計制度改革(いわゆる会計ビッグバン)により、2000年前後から連結中心のディスクロージャーへと全面的に転換しました。連結の歴史は、そのまま「グループを使った粉飾との戦い」の歴史でもあります。

詳細

支配の範囲を決める — 連結の対象

最初のステップは「どこまでをグループに含めるか」の判定です。基準となるのは持株比率そのものではなく支配の実質で、議決権の過半数を持つ場合はもちろん、過半数に満たなくても役員派遣や融資などを通じて意思決定を支配していれば子会社として連結します(支配力基準)。形式的な持株比率だけで判定すると、49%子会社に損失を移すような脱法が可能になるため、実質で判定することが重要なのです。支配には至らない関連会社は持分法の対象となり、合算はせず投資額と利益の取り分だけを反映します。

連結の手続き — 合算と消去

連結財務諸表の作成は、各社の個別財務諸表を出発点に、次の流れで進みます。

親会社と各子会社の個別財務諸表

単純合算 — 全社の数字を足し合わせる

投資と資本の相殺消去 — 親会社の子会社株式と子会社の資本を消す

内部取引の相殺消去 — グループ内の売買・債権債務・配当を消す

未実現利益の消去 — グループ内取引で生じた在庫等の利益を消す

非支配株主持分の区分 — 外部株主の取り分を分けて表示

連結財務諸表の完成

このうち出発点となるのが投資と資本の相殺消去です。親会社の貸借対照表には「子会社株式」という資産があり、子会社の貸借対照表には資本金などの純資産があります。この2つはグループ内では同じものを内と外から見た鏡像なので、そのまま合算すると資本が二重になってしまいます。そこで両者を相殺します。このとき、子会社株式の取得価額が子会社の純資産の取り分を上回っていれば、その差額がのれんとして連結貸借対照表に登場します。

内部取引と未実現利益の消去

次に、グループ内部の取引を消します。親会社から子会社への売上と子会社の仕入、親子間の売掛金買掛金、貸付金と借入金、子会社から親会社への配当などは、すべて両建てで相殺消去します。

とくに重要なのが未実現利益の消去です。親会社が原価70の商品を子会社に100で販売し、子会社がまだ外部に売っていないとします。個別上は親会社に利益30が立ち、子会社の棚卸資産は100で計上されています。しかしグループとして見れば、商品は原価70のまま倉庫の場所が変わっただけです。そこで利益30を消去し、在庫を70に戻します。この処理があるからこそ、「子会社への押し込み販売で利益を作る」ことが連結上は不可能になります。

連結の範囲 — ひとつの組織とみなす親会社個別では売上100を計上子会社個別では仕入100を計上内部売上 → 相殺消去外部の顧客グループの外外部への販売連結財務諸表に残るのは、点線の境界をまたいだ取引だけ
内部取引の消去 — グループ内の売買は外部との取引ではないため、連結では存在しなかったことになる

非支配株主持分 — 100%子会社でない場合

子会社の株式を親会社が100%持っていない場合、たとえば70%保有なら、残り30%は親会社以外の株主(非支配株主)のものです。連結では子会社の資産・負債・収益・費用を100%合算したうえで、純資産と利益のうち非支配株主の取り分を「非支配株主持分」「非支配株主に帰属する当期純利益」として区分表示します。連結損益計算書の最終行が「親会社株主に帰属する当期純利益」という長い名前になっているのは、グループ全体の利益から外部株主の取り分を除いた、親会社の株主のものだけを示すためです。

実務での位置づけと読み方

現在の開示制度では、投資家向けの決算情報は連結が基本であり、セグメント別の内訳はセグメント情報として注記などで補われます。一方、配当可能額の計算や法人税の申告は原則として個別財務諸表がベースであり、連結と個別は用途の異なる両輪として併存しています。読み手として押さえたいのは、連結と個別の差が語る情報です。連結売上が個別売上を大きく上回るなら事業の主体は子会社側にあり、連結利益と個別利益の乖離が大きいなら海外子会社などグループ末端の損益がグループ業績を左右している、といった構造が読み取れます。グループ経営が当たり前になった現代では、連結財務諸表こそが「その会社の本当の姿」を映す基本の書類です。