財務諸表●●●●●

持分法

Equity Methodもちぶんほう

関連会社の損益を持株比率に応じて投資額に反映させる連結の簡便な手法

概要

持分法は、支配はしていないものの経営に重要な影響を与えられる会社(関連会社)への投資について、その会社の儲けや損を持株比率に応じて自社の決算に取り込む方法です。たとえば30%出資している会社が1億円の利益を上げたら、その30%にあたる3,000万円を「持分法による投資利益」として自社の損益計算書に計上し、同時に貸借対照表の投資額(投資有価証券)を3,000万円増やします。

連結財務諸表が子会社の資産・負債・売上・費用を丸ごと合算するのに対し、持分法は「投資」と「投資損益」というそれぞれ一行だけで相手の業績を反映します。このため持分法は「一行連結(one line consolidation)」とも呼ばれます。合算の仕方こそ簡便ですが、最終的な当期純利益に与える影響は、同じ会社を連結した場合と原則として一致するように設計されています。

適用の目安となるのが議決権の保有比率です。過半数を握って支配していれば子会社として全部連結、おおむね20%以上50%以下で経営に重要な影響を及ぼせるなら関連会社として持分法、というのが基本的な整理です。ただし比率は機械的な線引きではなく、役員の派遣や重要な取引関係など「実質的に影響力があるか」で判断される点が重要です。

なぜ生まれたか

投資先の業績を決算に映す素朴な方法は、二つの極端の間で揺れていました。一つは、株を取得した値段(原価)のまま持ち続け、配当を受け取ったときだけ収益にする原価法です。しかしこの方法では、投資先がどれだけ利益を積み上げても、あるいは大赤字を出しても、配当が動かない限り投資元の決算にはまったく現れません。経営に深く関与している会社の実態が、決算書から抜け落ちてしまうのです。かつてはこの性質を逆手に取り、業績の悪い事業を出資先に移して損失を見えなくする、いわゆる「連結外し」の温床にもなりました。

もう一つの極端は全部連結ですが、支配していない会社の資産や負債を丸ごと合算するのは実態に合いません。50%に満たない出資先の借金を全額自社の貸借対照表に載せたら、かえって誤解を招きます。そこで「支配には至らないが重要な影響力はある」という中間的な関係のために、業績への持分だけを一行で取り込む持分法が用意されました。支配していれば全部連結、重要な影響なら持分法、それ未満なら有価証券としての評価という三段構えで、関与の深さに応じた写し方を選ぶ体系が出来上がったのです。

詳細

仕組み — 投資額が「持分の鏡」になる

持分法の核心は、貸借対照表に載せる投資額を、取得原価のまま固定せず「投資先の純資産のうち自社の持分」に近づくよう毎期洗い替えていく点にあります。処理の流れは次の三つが基本です。

第一に、投資先が利益を上げたら、持株比率を掛けた金額だけ投資額を増やし、同額を「持分法による投資利益」として損益計算書に計上します。損失なら逆に投資額を減らして投資損失を計上します。日本の損益計算書では、この持分法投資損益は営業外損益の区分に表示され、経常利益に影響します。

第二に、投資先から配当を受け取ったら、投資額をその分だけ減らします。原価法なら配当は受取配当金という収益ですが、持分法では収益にしません。利益はすでに計上済みなので、配当はその利益の「回収」にすぎず、収益にすると二重計上になるからです。ここが原価法との最も鮮明な違いです。

第三に、取得時に払った金額が投資先の純資産の持分を上回っていれば、その差額はのれんに相当する部分として投資額の中に含めて把握し、償却分を投資損益に織り込みます。連結のようにのれんが独立した科目として表に出ることはなく、あくまで「投資」一行の内側で処理されるのが持分法らしいところです。

全部連結(子会社・支配あり)持分法(関連会社・重要な影響)貸借対照表に丸ごと合算子会社の資産・負債を全額取り込む親の投資と子の資本は相殺消去他人の取り分は非支配株主持分で調整損益計算書も丸ごと合算売上高・費用の各行が全額膨らむ内部取引は消去する貸借対照表は「投資」の一行投資額を持分の変動に合わせて増減利益で増え、損失と配当で減る相手の資産・負債は取り込まない損益計算書も一行で反映持分法による投資損益(営業外区分)相手の利益 × 持株比率最終利益への影響は原則同じ — 違うのは「途中の行の膨らみ方」だから持分法は「一行連結」と呼ばれる
全部連結と持分法の違い — 丸ごと合算するか、一行に凝縮するか

数値例で追う

30%出資(取得価額3,000万円)の関連会社A社が、当期に1,000万円の利益を上げ、300万円の配当を出したとします。まず利益の持分300万円(1,000万円 × 30%)を投資利益として計上し、投資額を3,300万円に増やします。次に受け取った配当90万円(300万円 × 30%)だけ投資額を減らし、3,210万円とします。翌期以降もこれを繰り返すと、投資額は「取得原価 + 累積利益持分 − 累積配当」という形で、A社の純資産の30%を映す鏡のように動いていきます。A社が赤字を出せば投資額は減り、業績悪化がそのまま自社の決算に現れます。

実務での使いどころと落とし穴

持分法が効くのは、合弁会社(ジョイントベンチャー)や業務提携先など「経営には深く関わるが支配はしない」関係です。共同支配の合弁は50%ずつ出資することも多く、どちらの連結にも取り込めないため、持分法が実態に合った写し方になります。

落とし穴として知られるのが、全部連結との「見え方」の違いです。最終利益は同じでも、持分法では相手の売上高が自社の売上高に一切合算されません。関連会社を多く抱えるグループは、実際の事業規模に比べて売上高が小さく見えます。逆にいえば、業績の振るわない事業をあえて持分比率50%以下の会社に切り出せば、負債や売上の落ち込みを本体の各行から外せてしまう。だからこそ会計基準は、比率の形式ではなく影響力の実質で適用を判定し、持分法の対象範囲を連結財務諸表の注記で開示させています。

また、投資先の損失が続いて投資額がゼロまで減ったら、原則としてそれ以上の損失は取り込みません(追加出資の義務などがある場合を除きます)。持分法は投資額を上限とする片面的な写像であり、支配していない以上、相手の債務まで背負い込む前提には立たないという線引きです。ここに「全部連結と持分法は、関与の深さに応じた責任の写し方の違いである」という考え方がよく表れています。