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レバレッジ

Leverage ・ ればれっじ

借金で投資を膨らませ、利益も損失も倍率ぶん増幅する仕組み。倍率は耐えられる下落幅を決める

✦ 30秒で試す — 航海最後は1.6倍に上がる株で、退場させられる人がいる最後に株価が1.6倍になったとき、3倍で買った人の元手は?予想してみる

概要

レバレッジは、自分のお金(自己資本)に借入を上乗せして、手元の資金より大きな投資をすることです。名前は「てこ(lever)」から来ています。小さな力で重い物を動かすてこのように、小さな元手で大きな資産を動かすからです。自己資本100万円に借入900万円を足して1,000万円の資産を買えば、レバレッジは10倍です。資産が10%値上がりすれば利益は100万円、つまり自己資本は2倍になります。

ただし、てこは両方向に働きます。同じ10倍で資産が10%値下がりすれば、損失100万円で自己資本はすべて消えます。レバレッジは、投資が当たったときの利益と外れたときの損失を同じ倍率で増幅する装置で、期待値を高める魔法ではありません。住宅ローンで家を買う個人も、借入で工場を建てる企業も、預金を元手に貸し出す銀行も、みなレバレッジをかけています。そして歴史上のほとんどの金融危機の背後には、過剰なレバレッジという共通の因子が見つかります。

なぜ生まれたか

自己資本だけで事業をする世界では、挑戦の規模は「すでに持っている富」で決まってしまいます。良い事業の機会を見つけても元手のない人は実行できず、資金は持ち主のもとで眠るだけです。借入で他人の資金を集め、自己資本の何倍もの事業を動かす仕組みは、この制約を外すために生まれました。大航海時代の貿易も、産業革命の鉄道や工場も、借入と出資で自己資本を「てこ」にしたからこそ実現した規模の事業です。ほどよいレバレッジは、社会の眠っている資金を有望な事業へ動かす、資本主義の中心的なエンジンです。

「レバレッジ」が独立した言葉として強く意識されるようになったのは、むしろその危険が繰り返し表に出たからです。1929年の大恐慌の前夜、米国の投資家は証拠金取引で、株式の購入額の1割ほどの元手しか入れずに株を買い上げていました。暴落が始まると追加の担保(追証)を求められ、払えない人の株は強制的に売られ、その売りがさらに株価を下げました。利益の増幅装置は、下げ相場では破綻の増幅装置になる — この二面性が、大恐慌という金融危機の中で骨身にしみて理解されたのです。

詳細

増幅の算数 — 倍率と「破綻までの距離」

レバレッジの効果は、単純な算数で確かめられます。レバレッジを「資産÷自己資本」で測ると、10倍なら資産の価格の変動は、自己資本に対して10倍になって現れます。大事なのは、この増幅が損益だけでなく「破綻までの距離」を縮めることです。レバレッジなしなら資産が半値になっても財産が半分になるだけですが、10倍なら10%の下落で自己資本はゼロ、それ以上下がれば借金だけが残る債務超過です。一般に、倍率 L のとき自己資本がなくなる下落幅は 1÷L です。2倍なら50%、5倍なら20%、25倍なら4%です。

レバレッジなし10倍10倍で10%下落資産100=自己資本100借入 900自己資本100資産 1,000損失100借入 900資産も900自己資本 0(全損)10%下落 → 自己資本 −10%10%上昇 → 自己資本 +100%縦の長さはすべて同じ縮尺。倍率が上がるほど、薄い帯で大きな資産を支えることになる
同じ縮尺で描いたレバレッジなしと10倍 — 10倍の資産は大きく見えるが、自己資本の帯は同じ100で、10%の下落でちょうど消える

もう1つの算数は、借入の金利です。資産の利回りを r_A、借入の金利を r_D、負債と自己資本の比を D/E とすると、自己資本の利回り(ROE)は ROE = r_A + (D/E) × (r_A − r_D) になります。資産が5%稼ぎ、借入の金利が2%、負債が自己資本の9倍なら、ROE は 5% + 9 × 3% = 32%です。ところが資産がマイナス5%になると、−5% + 9 × (−7%) = −68%です。資産の利回りが借入の金利を上回っている間だけレバレッジは有利に働き、下回った瞬間に「借りるほど損」に反転します。低金利は借入のコストを下げるので、金融政策が緩和的な局面では、市場全体のレバレッジが積み上がりやすくなります。

なお、倍率の数え方には揺れがあります。「資産÷自己資本」(10倍)と数える流儀と、「負債÷自己資本」(D/E レシオ、9倍)と数える流儀があり、同じ状態でも数字が1ずれます。企業の財務では後者、投資の世界では前者がよく使われます。

倍率は「生存確率」の設定

下の部品で確かめてください。左の柱の緑の帯(自己資本)の上端をつかむと倍率が変わります。決めたら、上昇・4割の急落・回復という価格の道筋を再生します。自己資本が最初の2割まで減ると、貸し手に資産を売られて退場です。点線は、1倍・3倍・5倍で同じ道筋を歩いた人です。

⚡ 体験: 自己資本の帯をつかんで倍率を決め、価格の道筋を再生する
あなたの資産3.0倍借入 2.0自己資本 1.000123強制決済ライン最初=1 の倍率時間 →
倍率3.0倍価格100あなたの自己資本1.00
0

左の柱の緑の帯(自己資本)の上端をつかんで上下に動かすと、借入の割合(倍率)が変わります。決めたら「▶ 動かす」で価格の道筋を再生します。

左の柱=あなたの資産(上の灰=借入、下の緑=自己資本)。右=価格(灰の線)とあなたの自己資本(金の線)、どちらも最初=1。朱の破線=強制決済のライン(自己資本が最初の2割)

触ってみると、倍率を上げるほど最後の伸びは大きくなりますが、途中の谷で退場する人が出てくることが分かります。退場した人は、そのあと価格が戻っても回復に参加できません。どんなに優れた見通しも、退場すれば意味を失います。倍率を「どれだけ儲けたいか」で選ぶのではなく、「想定外の下落が来ても翌日まだ市場にいられるか」で選ぶ — レバレッジの適正な水準は、期待するリターンではなく、最悪のケースから逆算して決めるものです。

レバレッジはどこにでもある

レバレッジと聞くと FX(外国為替証拠金取引)や信用取引を思い浮かべがちですが、経済のあらゆる場所にあります。頭金1割で家を買う住宅ローンは10倍のレバレッジです。FX は少額の証拠金で為替レートの変動に大きく賭ける取引で、日本では個人の倍率の上限が25倍に定められています。株の信用取引は、約定代金の3割以上の保証金が必要なので、最大で約3.3倍です。企業が社債や借入で設備投資するのも財務レバレッジで、株式の株主から見れば、業績の変動が1株あたりの利益に増幅されて跳ね返ります。デリバティブは少額の証拠金で大きな想定元本を動かせるため、契約そのものに増幅が組み込まれた道具です。

銀行は、事業そのものがレバレッジです。預金という借入を元手に貸出をするため、日本の大手銀行の自己資本は、帳簿の上で総資産の5%前後しかありません。国際的な規制(バーゼル III)は、リスクに応じて重みを付けた資産に対する自己資本比率のほかに、単純に「自己資本÷総資産」を見るレバレッジ比率の最低水準を3%と定めています。33倍までしか膨らませてはいけない、という意味です。資産の価値がわずか数%傷むだけで経営が揺らぐのは、この倍率の高さのためです。

レバレッジ型の上場投資信託(ETF)には、見落とされやすい落とし穴があります。毎日「その日の値動きの2倍」になるよう借入を調整し直すため、上げ下げを繰り返す相場では目減りしていきます。指数が100から10%上がって110、翌日10%下がって99になると、指数は1%の下落です。2倍型は100から120、翌日20%下がって96となり、4%の下落です。指数の2倍(2%の下落)より悪くなるこの目減りは、ボラティリティ・ドラッグと呼ばれます。

デレバレッジの悪循環

レバレッジが本当に恐ろしいのは、一人の損失の大きさよりも、巻き戻し(デレバレッジ)が連鎖することです。借入で資産を買っている投資家は、資産価格が下がると貸し手から追加の担保(マージンコール)を求められます。現金がなければ資産を売って返すしかありませんが、皆が同時に売れば価格はさらに下がり、次のマージンコールを引き起こします。上げ相場では「値上がり → 担保の価値が上がる → もっと借りられる → もっと買う」という自己強化がバブルを膨らませ、下げ相場では同じループが逆回転して投げ売りの連鎖を生みます。2008年の金融危機で、30倍前後のレバレッジをかけていた米国の投資銀行が次々と行き詰まったのは、この逆回転の教科書的な実例でした。

試問

上昇・4割の急落・回復という、さきほどと同じ価格の道筋です。ほかの倍率の人の線は表示されません。

✦ 命題挑戦中

同じ価格の道筋を再生して、一度も強制決済されずに、最終の自己資本を最初の1.8倍以上にするレバレッジを見つけよ

  • 価格の道筋を最後まで再生した
  • 一度も強制決済されない
  • 最終の自己資本が最初の1.8倍以上
⚡ 体験: 倍率を決めて、谷を越えて最後まで残る
あなたの資産1.0倍自己資本 1.000123強制決済ライン最初=1 の倍率時間 →
倍率1.0倍価格100あなたの自己資本1.00
0

いまは借入なし(1倍)です。自己資本の帯(緑)の上端をつかんで倍率を決め、「▶ 動かす」で同じ道筋を再生してください。

左の柱=あなたの資産(上の灰=借入、下の緑=自己資本)。右=価格(灰の線)とあなたの自己資本(金の線)、どちらも最初=1。朱の破線=強制決済のライン(自己資本が最初の2割)