金利
Interest Rate ・ きんり
お金を借りる対価で、今のお金と将来のお金の交換比率。物価を差し引いた実質金利が行動を決める
✦ 30秒で試す — 航海お金を使わずに持っているだけで得をする経済がある10年後、預金で買えるリンゴが多いのは?予想してみる概要
金利は、貨幣を借りるときに支払う対価を、元本に対する年あたりの割合で表したものです。100万円を年利3%で借りれば、1年後に103万円を返します。この3%が金利です。借りる側から見ればお金のレンタル料、貸す側から見ればお金を手放しておく見返りです。
一段抽象化すると、金利は「時間をまたぐ取引の価格」です。リンゴの価格がリンゴとお金の交換比率であるように、金利は「今のお金」と「1年後のお金」の交換比率です。今の100万円と1年後の103万円が等しい価値だとすれば、「今使えること」に3%分の値段が付いていることになります。だから金利は、住宅ローンや預金だけでなく、企業の投資判断、株式の値段、為替レート、国の財政まで、時間が絡むあらゆる経済活動に影響する、経済で最も重要な価格のひとつです。
ただし、表示されている金利の数字(名目金利)だけを見ていると判断を誤ります。物価が上がっていれば、返ってきたお金で買えるものは減っているからです。物価の上昇分を差し引いた「実質金利」が、人々の行動を実際に動かしています。
なぜ生まれたか
貸し借りには、貸す側が引き受ける見えないコストが3つあります。第一に、貸している間そのお金を自分で使えないこと。事業に回せば得られたはずの利益をあきらめており、これは機会費用そのものです。第二に、返ってこないかもしれないこと。第三に、返ってきたお金の価値が目減りしているかもしれないこと。インフレーションが進めば、同じ金額で買えるものは減ります。金利はこの3つを引き受けることへの補償として生まれました。古代メソポタミアの粘土板には、すでに利息付きの貸し借りの記録が残っています。
一方で、利息の正当性は長く論争の的でした。アリストテレスは「貨幣は子を産まない」と利息を批判し、中世ヨーロッパの教会は利息を取ること(徴利)を禁じました。それでも商業が広がると、スコラ学の神学者たちは例外を認めていきます。貸したせいで被った損害や、貸さなければ得られたはずの利益の補償なら正当だ、という考え方で、これは今日の機会費用の考え方の先駆けです。イングランドでは1545年に年10%を上限として利息が合法化されました。
19世紀末になると、利息は「なぜ正当か」ではなく「なぜ存在するか」として説明されるようになります。オーストリアのベーム=バヴェルクは、人は同じものなら将来より今を高く評価し、しかも回り道の生産(道具や機械を作ってから生産する)ほど実りが多いので、今の財には将来の財に対するプレミアムが付く、と論じました。米国のアーヴィング・フィッシャーは1930年の『利子論』で、金利を「待つことへの報酬」と「投資の収益」が釣り合う価格として整理し、名目金利と実質金利の関係(フィッシャー方程式)を示しました。スウェーデンのクヌート・ヴィクセルは1898年、景気を過熱させも冷やしもしない金利の水準(自然利子率)があり、市場の金利がそれより低ければ物価が上がり続ける、と説きました。これが、中央銀行が金利で物価を操る現代の金融政策の理論の出発点です。
詳細
金利の中身を分解する
現実の金利は一枚岩ではなく、いくつかの層の積み重ねとして理解できます。土台にあるのは、返ってこない心配がほぼない相手に貸すときにも求められる「時間の対価」です。その上に、返ってくるまでの物価の上昇分(インフレ期待)が積まれます。長く貸すほど、途中で金利や物価がどう変わるか分からない不確実性を背負うので、期間に応じた上乗せ(ターム・プレミアム)が加わります。すぐに売って現金に換えにくい貸し方には流動性プレミアムが、借り手が返せなくなる可能性にはリスク(信用)プレミアムが加わります。国債より社債の金利が高く、無担保のカードローンが住宅ローンより高いのは、この上乗せの差です。
名目と実質 — 物価を差し引いて考える
表示されている金利(名目金利)から物価の上昇率を差し引いたものが実質金利です。「実質金利 ≒ 名目金利 − インフレ率」という関係をフィッシャー方程式と呼びます。数字で追ってみます。預金金利が年1%、物価が年3%上がる世界で100万円を10年預けると、預金は約110万円に増えます。ところが1個1万円だったリンゴは約1万3,400円になり、買えるリンゴは100個から約82個に減ります。実質金利が約−2%だからです。
逆に、名目金利が0%でも物価が年2%ずつ下がるデフレーションなら、実質金利はプラス2%です。お金を使わずに持っているだけで、買える量が増えていきます。見た目の金利がゼロでも、経済にはブレーキがかかっているのです。お金を借りて設備を買う企業にとっても同じで、借金の実質的な重さは名目金利ではなく実質金利で決まります。
下の部品で確かめてください。左の平面の点が (物価上昇率, 名目金利) です。斜めの線は実質金利が等しい点のつながりで、点を動かして10年進めると、右の預金とリンゴの数が動きます。
いまは名目金利1%、物価上昇率3%。預金は増えるのに……10年すすめるを押して、かごのリンゴを見てください。そのあと点をつかんで動かしてみてください。
左: 横=物価上昇率、縦=名目金利。斜めの線は実質金利(名目−物価)が等しい点のつながり。緑の側では実質的にお金が増え、朱の側では目減りする。右: 預金(金の柱)と、それで買えるリンゴ(1粒=5個)
複利 — 時間が利息に利息を生む
利息の計算には、元本にだけ利息が付く単利と、利息にも利息が付く複利があります。長期の資産形成や借金で効いてくるのは複利です。年利7%の複利なら約10年で元本が2倍になり(72を金利で割ると倍になる年数の目安になる「72の法則」)、30年ではおよそ7.6倍になります。年利15%のリボ払いのように、敵に回せば雪だるま式に膨らむ負債になります。金利のわずかな差が、時間を掛け合わせることで巨大な差に化けるのが複利の本質で、実質金利の差も同じように時間とともに膨らみます。
金利は何で決まるのか — 市場と中央銀行、自然利子率
金利が「時間の価格」であるということは、価格である以上、貸したいお金と借りたいお金の需要と供給で水準が動くということです。貯蓄したい人が多く、投資したい企業が少なければ金利は下がり、逆なら上がります。人口の高齢化や成長率の低下で、先進国ではこの釣り合いの金利(ヴィクセルの言う自然利子率)が長く下がってきたと考えられています。
短い期間の金利の起点は、中央銀行が政策金利として動かします。政策金利を下げれば、住宅ローンや企業向け融資の金利も下がり、借りて使う・投資することが有利になって景気が温まります。上げればブレーキがかかります。政策金利が自然利子率より低ければ緩和的、高ければ引き締め的です。ただし金利がゼロ近くまで下がると、それ以上は下げにくくなります(ゼロ金利制約)。現金を持っていれば0%は確保できるので、預金の金利を大きくマイナスにすることは難しいからです。日本銀行は2016年2月から2024年3月まで、銀行が日銀に預けるお金の一部に−0.1%の金利を課すマイナス金利政策をとりました。その後は利上げに転じ、政策金利は2026年9月時点で1.25%程度です。長い期間の金利が期間ごとにどう並ぶかはイールドカーブで見渡せます。
資産価格との逆相関
実務上もうひとつ重要なのが、金利と資産価格の逆相関です。将来お金を生む資産 — 債券、株式、不動産 — の今の値打ちは、将来の収益を金利で割り引いて計算されます(現在価値)。金利が上がると割引が強くなり、同じ将来の収益でも今の値打ちは下がるので、資産価格には下落圧力がかかります。「利上げで株が下がる」の背後にあるのはこの計算です。すでに発行された債券も、市場金利が上がれば相対的に見劣りして値下がりします。金利は単なる借金のコストではなく、あらゆる資産の値付けの基準線 — 経済の重力のようなもの — として働いています。
試問
名目金利が0%に張り付いた経済です。預金は1円も増えません。
名目金利は 0% に固定されています(点は横にしか動きません)。点をつかんで物価上昇率を決め、10年すすめるで確かめてください。
左: 横=物価上昇率、縦=名目金利。斜めの線は実質金利(名目−物価)が等しい点のつながり。緑の側では実質的にお金が増え、朱の側では目減りする。右: 預金(金の柱)と、それで買えるリンゴ(1粒=5個)
