金利
Interest Rate ・ きんり
お金を借りる対価。時間をまたぐ取引の価格として経済全体を動かす
概要
金利は、貨幣を借りるときに支払う対価を、元本に対する年率などの割合で表したものです。100万円を年利3%で借りれば、1年後に103万円を返す — この3%が金利です。借りる側から見ればお金のレンタル料、貸す側から見ればお金を手放しておく見返りです。
一段抽象化すると、金利は「時間をまたぐ取引の価格」と言えます。リンゴの価格がリンゴと貨幣の交換比率であるように、金利は「今のお金」と「将来のお金」の交換比率です。今の100万円と1年後の103万円が等価だとすれば、それは「今使えること」に3%分の価値がある、という時間の値付けにほかなりません。だからこそ金利は、住宅ローンや預金といった身近な場面だけでなく、企業の投資判断、株価や為替、国の財政まで、時間が絡むあらゆる経済活動に影響を及ぼす、経済でもっとも重要な価格のひとつなのです。
なぜ生まれたか
貸し借りという行為には、貸す側が引き受ける「見えないコスト」が3つあります。第一に、貸している間そのお金を自分で使えないこと。事業に回せば得られたはずの利益をあきらめており、これは機会費用そのものです。第二に、返ってこないかもしれないこと。借り手が破産すれば元本ごと失います。第三に、返ってきたお金の価値が目減りしているかもしれないこと。インフレーションが進めば、同じ金額でも買えるものは減っています。
金利は、この3つのコストを引き受けることへの補償として自然に生まれました。無償で貸せと言われれば誰も貸さず、お金は余っている人の手元に眠ったままになります。金利という価格があるからこそ、「今は使わない人のお金」が「今使いたい人」へと流れ、貯蓄が投資に変わる回路がつながります。古代メソポタミアの粘土板にすでに利息付きの貸借記録が残っているほど古い仕組みであり、一方で中世ヨーロッパでは利息(徴利)が宗教的に禁じられるなど、その正当性は長く論争の的でもありました。
詳細
金利の中身を分解する
現実の金利は一枚岩ではなく、いくつかの層の積み重ねとして理解できます。土台にあるのは、リスクがほぼゼロでも要求される「時間の対価」で、国債の利回りがその目安になります。その上に、予想されるインフレーション分の上乗せ(インフレ予想)、そして借り手ごとの返済不能リスクに応じた上乗せ(リスクプレミアム)が積まれます。国よりも企業の借入金利が高く、大企業よりも財務の不安な企業の金利が高く、無担保のカードローンが住宅ローンより高いのは、すべてこのリスクプレミアムの差です。
名目と実質 — インフレを差し引いて考える
金利を見るときに欠かせないのが、名目金利と実質金利の区別です。表示されている金利(名目金利)からインフレーション率を差し引いたものが実質金利で、「実質金利 ≒ 名目金利 − インフレ率」という関係はフィッシャー方程式と呼ばれます。名目3%の預金でも、物価が3%上がっていれば買えるものは増えておらず、実質的な儲けはゼロです。逆に名目金利が0%でも物価が2%下がるデフレ下では、実質金利はプラス2%であり、お金を使わず持っているだけで得をする — つまり見た目の低金利でも経済にはブレーキがかかっている、ということが起こります。経済の行動を実際に左右するのは実質金利のほうです。
複利 — 時間が利息に利息を生む
利息の計算には、元本にだけ利息が付く単利と、利息にも利息が付く複利があります。長期の資産形成や借金で効いてくるのは圧倒的に複利です。年利7%の複利なら約10年で元本が2倍になり(72を金利で割ると倍増年数の目安になる「72の法則」)、30年ではおよそ8倍になります。この爆発力は味方につければ強力な資産形成の武器になり、敵に回せば — たとえば年利15%のリボ払いでは — 雪だるま式に膨らむ負債になります。金利のわずかな差が、時間を掛け合わせることで巨大な差に化けるのが複利の本質です。
年利と期間を動かして、単利との差が後半ほど加速度的に開いていくのを確かめてみてください。
年利5%を30年 — 複利では元本の約4.3倍。単利との差 1,821,942 円は、すべて「利息に付いた利息」が生んだ分です。目安として 72 ÷ 5 ≒ 14年で元本が2倍になります(72の法則)。
金利は経済全体のアクセルとブレーキ
金利が「時間の価格」であるということは、価格である以上、貸したいお金と借りたいお金の需要と供給で水準が動くということです。そして現代では、この価格の起点を中央銀行が金融政策として操作します。中央銀行が政策金利(銀行同士の短期の貸し借りの金利)を引き下げると、それを基準に住宅ローンや企業向け融資の金利も下がり、借りて使う・投資することが有利になって経済が刺激されます。逆に引き上げれば、借入が抑えられ過熱やインフレーションにブレーキがかかります。金利ひとつで経済全体の温度を調整できるのは、あらゆる時間をまたぐ取引がこの価格を参照しているからです。
資産価格との逆相関
もうひとつ実務上重要なのが、金利と資産価格の逆相関です。将来お金を生む資産 — 債券、株式、不動産 — の現在の価値は、将来の収益を金利で割り引いて計算されます。金利が上がると割引が強くなり、同じ将来収益でも現在価値は下がるため、資産価格には下落圧力がかかります。「利上げのニュースで株が下がる」の背後にあるのはこの計算です。すでに発行された債券も、市場金利が上がれば相対的に見劣りして価格が下がります(金利と債券価格の逆相関)。金利は単なる借金のコストではなく、あらゆる資産の値付けの基準線 — 経済の重力のようなもの — として働いているのです。
