金融●○○○○

複利

Compound Interestふくり

利息が利息を生む雪だるま式の増え方。時間を味方につける金融の第一原理

概要

複利とは、元本に付いた利息を引き出さずに元本へ組み入れ、次の期間はその合計に対して利息が付く増え方のことです。利息の計算方法には2種類あり、毎回もとの元本だけに利息が付くのが単利、「元本+これまでの利息」に利息が付くのが複利です。複利では利息そのものが次の利息を生むため、増え方は足し算ではなく掛け算になり、時間が経つほど加速していきます。雪玉を転がすと表面に付いた雪がさらに雪を付着させて大きくなる — 「雪だるま式」という比喩がまさに複利の姿です。

100万円を年率7%で運用すると、単利なら50年後に450万円ですが、複利なら約2,945万円と桁が変わります。最初の10年ではほとんど差が見えないのに、後半になるほど差が爆発的に開く — この「最初は地味、あとで劇的」という非対称性が複利の本質であり、直感で見積もると必ず過小評価してしまうポイントです。預金や投資だけでなく、借金の膨張、経済成長、人口増加、感染症の拡大まで、「増えた分がさらに増える」構造を持つ現象はすべて複利(指数関数的成長)の言葉で理解できます。

なぜ生まれたか

利息を付けてお金を貸す行為そのものは、古代メソポタミアの粘土板にまで遡るほど古い慣行です。しかし貸付の期間が長くなると、「途中で発生した利息にも利息を付けるべきか」という実務上の問題が避けられなくなります。利息に利息を付けない単利の契約では、貸し手にとって「1年ごとに利息を回収してすぐ貸し直す」のと結果が食い違ってしまい、長期契約が不利になるからです。複利は、この「利息もまた貸せるお金である」という当然の事実を計算に織り込んだ、長期の貸借を一貫した理屈で扱うための仕組みでした。実際、バビロニアの数学文書にはすでに複利の計算問題が登場します。

一方で、利息が利息を生む力は借り手を際限なく追い詰めるため、複利は長らく警戒の対象でもありました。多くの宗教や法制度が利息そのものや複利を規制してきた歴史は、この増え方の暴力性の裏返しです。近代になると、複利は数学の発展も促しました。17世紀にヤコブ・ベルヌーイが「利息を付ける回数を年1回から無限に細かくしたら元利合計はどこまで増えるか」を考察し、その極限として自然対数の底 e(約2.718)を発見しています。複利は金融の道具であると同時に、指数関数という数学的概念が生まれる現場のひとつだったのです。

詳細

単利と複利 — 時間が差を生む

元本を P、年あたりの金利を r とすると、n 年後の元利合計は単利で P×(1 + r×n)、複利で P×(1 + r)ⁿ になります。式の違いは「n が掛け算の中にいるか、指数の位置にいるか」だけですが、グラフに描くと単利は直線、複利は上に反り返る曲線になり、時間とともに差が開き続けます。

金額年数単利複利前半:差はわずか後半:差が加速して開く利息は元本にだけ付く利息が利息を生み、増えた分がさらに増える
単利と複利 — 前半はほぼ同じに見え、後半で複利が爆発的に引き離す

この曲線の形が示すとおり、複利で効くのは利率よりもむしろ「時間の長さ」です。年率7%・30年なら元本は約7.6倍になりますが、同じ利率でも10年なら約2倍にしかなりません。老後資金の積立で「1日でも早く始めるのが最大の武器」と言われるのは精神論ではなく、指数関数の性質そのものです。

単利と複利の差が「前半は地味、後半で爆発」になる様子は、年利と期間を実際に動かすとよく分かります。

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元本複利単利45800年1530
複利での最終額 4,321,942単利なら 2,500,000差額 +1,821,942

年利5%を30年 — 複利では元本の約4.3倍。単利との差 1,821,942 円は、すべて「利息に付いた利息」が生んだ分です。目安として 72 ÷ 5 ≒ 14年で元本が2倍になります(72の法則)。

72の法則 — 暗算で複利をつかむ

複利の増え方を直感でつかむ道具として「72の法則」があります。72を年利(%)で割ると、元本が2倍になるおよその年数が求まる、という近似式です。年利6%なら 72÷6 = 12年で2倍、年利3%なら24年で2倍。逆向きに使えば「20年で2倍にしたければ年利約3.6%が必要」ともわかります。この法則は増える側だけでなく減る側にも使えます。年率3%のインフレーションが続けば、貨幣の実質的な購買力は約24年で半分になる — 現金を持ち続けることにもコストがあると教えてくれます。

複利は敵にも味方にもなる

複利の力は方向を選びません。資産運用では味方ですが、借金では最強の敵になります。年利15%のリボルビング払いを放置すれば、72の法則が示すとおり借金は5年足らずで2倍に向かいます。歴史上、複利が厳しく規制されてきたのはこのためで、日本でも利息制限法が上限金利を定めています。また銀行預金・債券・株式のどれで運用するかによって「複利が働く形」は違います。預金は利息の自動組み入れ、債券は受け取った利子の再投資、株式は企業が利益を内部留保して再投資すること自体が複利の働きです。配当や分配金を受け取るたびに使ってしまうと、複利の後半の加速部分を自ら手放すことになります。

実務での使いどころと落とし穴

複利の考え方は、将来のお金と今のお金を同じものさしで比べる現在価値の計算の土台であり、投資判断・年金設計・企業価値評価のすべてに顔を出します。実務上の落とし穴は主に3つです。第一に、名目リターンだけを見てしまうこと。手数料と税金とインフレを引いた「実質リターン」で複利計算をしないと、見積もりは大きく狂います。年1%の信託報酬の差は、30年の複利では最終資産の3割前後の差になり得ます。第二に、平均リターンの複利計算を鵜呑みにすること。「+50%の翌年に−50%」の平均は0%ですが、実際の資産は 1.5×0.5 = 0.75 倍に減っています。変動が大きいほど複利の実際の成績(幾何平均)は単純平均を下回るため、変動を抑えることが長期の複利にはリターンそのものと同じくらい効きます。これはリスクとリターン分散投資を学ぶ動機にもなります。第三に、途中で止めてしまうこと。複利の果実は曲線の右端に集中しているため、暴落時に売って再開が遅れると、いちばん増えるはずだった区間を失います。複利を味方につける最大のコツは、退屈な前半に耐えて時間を確保することです。