金融●●○○○

複利

Compound Interest ・ ふくり

利息を元本に組み入れ、利息が利息を生む増え方。後半ほど加速し、時間が最大の味方にも敵にもなる

✦ 30秒で試す — 航海最初は誤差、やがて主役。利息が利息を生んでいく利息が生んだ利息の合計が100円を超えるのは?予想してみる

概要

複利とは、元本に付いた利息を引き出さずに元本へ組み入れ、次の期間はその合計に対して利息が付く増え方のことです。利息の付け方には2種類あります。毎回もとの元本だけに利息が付くのが単利、「元本+これまでの利息」に利息が付くのが複利です。複利では利息そのものが次の利息を生むので、増え方は足し算ではなく掛け算になり、時間が経つほど加速していきます。雪玉を転がすと表面に付いた雪がさらに雪を呼んで大きくなる — 「雪だるま式」という言い方は複利の姿そのものです。

100万円を年率7%で運用すると、単利なら50年後に450万円ですが、複利なら約2,946万円と桁が変わります。最初の10年では差がほとんど見えないのに、後半になるほど差が大きく開きます。この「最初は地味、あとで劇的」という非対称性が複利の本質で、直感で見積もるとたいてい過小評価してしまいます。複利の土台にあるのは金利ですが、同じ「増えた分がさらに増える」構造は、借金の膨張、経済成長、物価の上昇、感染症の拡大にも現れます。どれも複利(数学の言葉では指数関数的な成長)の言葉で読み解けます。

なぜ生まれたか

利息を取ってお金を貸す習慣は、古代メソポタミアの粘土板にまで遡るほど古いものです。貸付の期間が長くなると、「途中で発生した利息にも利息を付けるべきか」という問題が避けられなくなります。利息に利息を付けない単利の契約だと、貸し手にとっては「1年ごとに利息を回収して、すぐ別の人に貸し直す」ほうが得になってしまい、長期の契約ほど不利になります。複利は「受け取った利息もまた貸せるお金だ」という当たり前の事実を計算に織り込み、期間の長さにかかわらず一貫した理屈で貸し借りを扱うための仕組みでした。紀元前18世紀ごろのバビロニアの粘土板には、年20%の利息で元利合計が2倍になるまで何年かかるかを問う計算問題がすでに残っています。

一方で、利息が利息を生む力は借り手を際限なく追い詰めます。多くの宗教や法制度が利息そのもの、あるいは複利を規制してきた歴史は、この増え方の強さの裏返しです。近代になると、複利は数学の発展も促しました。1683年、ヤコブ・ベルヌーイは「利息を付ける回数を年1回から半年ごと、毎月、毎日……と細かくしていくと、元利合計はどこまで増えるか」を考え、その極限として自然対数の底 e(約2.718)に行き着きました。複利は金融の道具であると同時に、指数関数という数学の概念が生まれた現場のひとつでもあったのです。

詳細

単利と複利 — 差を生むのは時間

元本を P、年あたりの金利を r とすると、n 年後の元利合計は単利なら P×(1 + r×n)、複利なら P×(1 + r)ⁿ です。式の違いは「n が掛け算の中にいるか、指数の位置にいるか」だけですが、グラフにすると単利は直線、複利は上に反り返る曲線になります。複利の曲線は出発点から一度も単利の直線を下回らず、はじめはほとんど重なって、年を追うごとに離れていきます。

万円年数040080012001600010203040単利複利10年: 197 と 17030年: 761 と 310利息の利息前半は利息のほとんどが元本から生まれ、後半は利息から生まれた利息が主役になる
100万円を年率7%で運用したとき(計算値)。複利の曲線は単利の直線にはじめ寄り添い、後半で大きく引き離す。あいだの塗りが「利息の利息」

図が示すとおり、複利で効くのは利率そのものより「時間の長さ」です。年率7%なら、10年で元本は約2倍、30年で約7.6倍、40年で約15倍になります。10年目から30年目までの20年で増えた額は、最初の10年で増えた額の約6倍です。老後資金の積立で「1日でも早く始めるのが最大の武器」と言われるのは、精神論ではなく指数関数の性質そのものです。

利息の家系図 — 後半の加速の正体

後半の加速は、利息を「誰から生まれたか」で分けると見えてきます。元本から生まれた利息を「子」とすると、子は毎年 P×r ずつ一定に増えます。単利とは、この子だけを数える計算です。複利では、子もまた利息を生み(孫)、孫もまた利息を生みます(ひ孫)。数学的には、(1 + r)ⁿ を展開したときの各項がちょうど各世代にあたり、n 年後の孫の世代は P×r²×n(n−1)/2 と年数の2乗で増えます。はじめは子に比べてごく薄い層だった孫以降の世代が、年を重ねるうちに太り、やがて元本より大きくなる — 複利の曲線が単利の直線から離れていく部分は、すべてこの「利息の利息」です。

下の部品で、時間軸の右端のつまみを右へ引いて確かめてください。1年進むごとに、その年の利息のコインが世代ごとの色で山に降り積もります。

⚡ 体験: 時間を進めて、利息の家系が太るのを見る
単利148万円8年目の山の中身それより先0.0万円ひ孫0.7万円孫(利息の利息)7.0万円子(元本の利息)40.0万円元本100.0万円
年数8年残高148万円単利なら140万円孫より先の世代7.7万円
年利

時間軸の右端の金のつまみを右へ引いてみてください。1年進むごとに、その年の利息のコインが山に降り積もります。

灰青=元本、金=元本から生まれた利息(子)、クリーム=孫、白=ひ孫、水色=それより先。破線=単利ならここまで — 単利の線は元本と子の合計にぴったり一致する

72の法則と連続複利 — 暗算で複利をつかむ

複利の増え方を直感でつかむ道具が「72の法則」です。72を年利(%)で割ると、元本が2倍になるおよその年数が出ます。年利6%なら 72÷6 = 12年、年利3%なら24年です(年利7%なら 72÷7 ≈ 10.3年、正確には10.24年)。逆向きに使えば「20年で2倍にするには年利約3.6%が要る」とも分かります。減る側にも使えます。年率3%のインフレーションが続けば、貨幣の購買力は約24年で半分になります。現金を持ち続けることにもコストがある、ということです。

利息を組み入れる頻度も結果を変えます。年利12%を「毎月1%ずつ」組み入れると、1年後の元利合計は 1.01¹² ≈ 1.1268 倍で、年1回の12%より多くなります。このように、表示上の年率(名目年率、英語では APR)と、組み入れを考慮した実際の1年の増え方(実効年率、APY)は食い違います。ローンやカードの金利を比べるときは、どちらの数字かを確かめる必要があります。組み入れの間隔を限りなく細かくした極限が連続複利で、元利合計は P×e^(rt) になります。ベルヌーイが見つけた e は、ここで現れる数です。連続複利は計算が扱いやすいため、オプションの価格理論など金融工学の数式で標準的に使われます。

複利は敵にも味方にもなる

複利の力は方向を選びません。資産運用では味方ですが、借金では最強の敵になります。年利15%のリボルビング払いを放置すれば、72の法則のとおり5年足らず(正確には約5.0年)で残高は2倍に向かいます。複利が歴史上厳しく規制されてきたのはこのためで、日本でも利息制限法が元本の額に応じて年15〜20%の上限金利を定めています。

どの資産で運用するかによって、複利の働き方も違います。銀行預金では利息が自動で組み入れられ、債券では受け取った利子を再投資して初めて複利になります。株式では、企業が利益を配当せず内部に留めて事業に再投資すること自体が複利として働きます。配当や分配金を受け取るたびに使ってしまうと、複利の後半の加速を自分で手放すことになります。

実務での使いどころと落とし穴

複利は、将来のお金と今のお金を同じものさしで比べる現在価値の土台で、投資判断・年金の設計・企業価値の評価のすべてに顔を出します。落とし穴は主に3つです。

第一に、名目のリターンだけを見てしまうことです。手数料・税金・インフレを引いた後の「実質」のリターンで複利を計算しないと、見積もりは大きく狂います。たとえば年7%の運用と、そこから信託報酬などで年1%引かれた年6%の運用では、30年後の資産は 1.06³⁰ ÷ 1.07³⁰ ≈ 0.75、つまり約25%少なくなります。わずか1%の差が、複利では4分の1の差に化けます。インデックスファンドが低コストを重視するのはこのためです。

第二に、平均リターンで複利を計算してしまうことです。「+50%の翌年に−50%」の平均は0%ですが、実際の資産は 1.5×0.5 = 0.75 倍に減っています。値動きが大きいほど、実際に複利で増える速さ(幾何平均)は単純平均を下回ります。変動を抑えることが長期の複利にはリターンそのものと同じくらい効くという事実は、リスクとリターンや分散投資を学ぶ動機にもなります。

第三に、途中でやめてしまうことです。複利の果実は曲線の右端に集中しています。暴落のときに売って再開が遅れると、いちばん増えるはずだった区間を失います。人は目先の報酬を大きく見積もりがちで(現在バイアス)、成果の見えにくい前半に積立をやめたくなります。複利を味方につける最大のこつは、退屈な前半に耐えて時間を確保することです。

試問

100万円を年利5%で預けたばかりです。まだ5年しか経っていません。

✦ 命題挑戦中

年利5%のまま時間を進め、利息から生まれた利息(孫より先の世代)の合計を、元本より大きくせよ

  • 年利は5%のまま
  • 孫より先の世代の合計が元本(100万円)より大きい
  • つまみから手を離している
⚡ 体験: 時間を進めて、利息の利息を育てる
単利128万円5年目の山の中身それより先0.0万円ひ孫0.1万円孫(利息の利息)2.5万円子(元本の利息)25.0万円元本100.0万円
年数5年残高128万円単利なら125万円孫より先の世代2.6万円

年利は5%に固定されています。時間軸の右端の金のつまみを右へ引いて、孫より先の世代(淡い色の層)を育ててください。

灰青=元本、金=元本から生まれた利息(子)、クリーム=孫、白=ひ孫、水色=それより先。破線=単利ならここまで — 単利の線は元本と子の合計にぴったり一致する