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銀行

Bank ・ ぎんこう

預金を受け入れて貸し出し、決済を担う仲介業。金額・満期・リスクを変換する経済の心臓

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概要

銀行は、お金に余裕のある人から預金を受け入れ、お金を必要とする人に貸し出し、そのあいだの支払い(決済)を引き受ける仕事です。給料の受け取り、家賃の振込、住宅ローン、企業の運転資金 — 私たちの経済活動のほとんどは、どこかで銀行の口座と貸出を通っています。貨幣が経済の血液だとすれば、銀行はそれを全身に送り出す心臓にあたります。

銀行の儲けの基本は「利ざや」です。預金者には低めの金利を払い、借り手からは高めの金利を受け取る。その差が、貸し倒れのリスクを引き受け、借り手を審査し、店舗やシステムを維持する対価になります。単なる金庫番ではなく、「誰に貸せば返ってくるか」を見極める目利きと、「いつでも引き出せる預金」と「長期の貸出」を両立させる綱渡りこそが、銀行という商売の本体です。

なお、「預金を集めて、それを貸し出す」という見方は、銀行の役割をつかむための近似です。実際の銀行は、貸出をするときに借り手の口座へ預金を書き込み、新しいお金を生み出しています。この仕組みは信用創造で詳しく扱います。

なぜ生まれたか

銀行がない世界を想像してみます。事業を始めたい商人は、お金を貸してくれる相手を自力で探さなければなりません。しかし貸し手から見ると、見知らぬ相手が本当に返してくれるかは分かりませんし(借り手だけが自分の実力を知っている、という情報の非対称性の問題です)、10年間貸したままでは急な入り用に対応できません。金額も合いません — 大きな工場を建てる資金を、一人の貸し手が用立てるのは困難です。貸したい人と借りたい人は大勢いるのに、金額・期間・信用の3つが噛み合わず、取引が成り立たない。これが銀行以前の世界の詰まりでした。

銀行はこの3つのずれを一手に解消します。多数の小口の預金を束ねて大口の貸出に変え(金額の変換)、いつでも引き出せる預金で長期の貸出をまかない(満期の変換)、審査と継続的な取引を通じて借り手の信用を専門に見極める(リスクと情報の変換)。中世イタリアの両替商は、商人の貨幣を預かって帳簿の上で付け替える決済を始め、17世紀ロンドンの金細工職人は、預かった金貨の保管証を発行するうちに貸出業へ発展しました。日本では1873年に渋沢栄一らの第一国立銀行が生まれています。個人どうしでは成り立たなかった貸し借りを、あいだに一枚はさむことで大量に成り立たせる — 銀行は「信用の仲介」を産業にした発明です。

詳細

3つの変換 — 銀行が間に立つ意味

銀行の働きは「変換業」として整理すると見通しがよくなります。第一に金額の変換。何万人分の小口の預金をまとめて、企業向けの大口の融資に組み替えます。第二に満期の変換。預金者には「いつでも引き出せる」という流動性を約束しながら、その資金を10年、20年という長期の貸出に回します。第三にリスクと情報の変換。個々の貸出には貸し倒れのリスクがありますが、多数の貸出に分けて持つ分散投資と、決算書や日々の口座の動きから借り手の実力を読む審査によって、預金者が一人では負えないリスクを引き受けられる水準に加工します。借り手と貸し手のあいだの情報の非対称性を、情報を生み出す専門家として埋めているのです。

預金者A預金者B預金者C …小口・短期いつでも引き出したい銀行金額の変換満期の変換リスクと情報の変換企業への融資住宅ローン大口・長期すぐには返せない預金金利貸出金利貸出金利と預金金利の差が利ざや — リスクの引き受けと審査の対価
銀行の仲介構造 — 小口・短期・安全を望む預金者と、大口・長期の資金を求める借り手を、3つの変換でつなぐ

決済 — 銀行のもうひとつの顔

貸出と並ぶ銀行のもうひとつの柱が決済です。振込、口座引き落とし、カード決済の裏側では、預金残高の付け替えが行われています。同じ銀行の中なら帳簿の書き換えで済みますが、別の銀行どうしのあいだでは、それぞれが中央銀行に置いている当座預金(日本なら日本銀行の当座預金)の付け替えで最終的に決済されます。中央銀行の当座預金で払い終えた支払いは取り消されない — これを決済の最終性(ファイナリティ)と呼び、銀行の預金が安心してお金として使われる土台になっています。給料も家賃も税金も、現金ではなく預金の数字の移動で支払われるのが普通で、実際、世の中のお金の大半は現金ではなく銀行預金です。

自己資本 — 損失を吸収するクッション

銀行は預金という借金で資産を持つので、他の企業よりずっと高いレバレッジで営業しています。貸出の一部が焦げ付いたとき、その損失を吸収するのが自己資本です。国際的な規制(バーゼル III)は、リスクに応じて重みを付けた資産に対して、最も質の高い普通株式等 Tier1 を4.5%以上、Tier1 を6%以上、総自己資本を8%以上持つことを求め、さらに平時に積み増すバッファーを上乗せしています。加えて、リスクの重みを付けずに「自己資本÷総資産」を見るレバレッジ比率の最低水準を3%としています。リスクの重みの計算に頼りすぎると、「安全とされた資産」に偏って膨らむ抜け道ができるからです。

2000年代には、貸出を自分で持ち続けず、証券化して投資家に売ってしまう「組成して売る」(オリジネート・トゥ・ディストリビュート)という型が広がりました。自己資本を節約できる一方で、売るつもりの貸出は審査が甘くなりがちで、2008年の金融危機ではサブプライムローンの損失が世界中に散らばる原因になりました。銀行が審査という情報の生産を手放すと、仲介の価値そのものが揺らぐのです。

満期の変換という宿命的な弱点

銀行の便利さの源である満期の変換は、そのまま構造的な弱点でもあります。銀行は預金の全額を手元に置いているわけではなく、大部分を長期の貸出に回し、日々の引き出しに必要な分だけを準備しています。ふだんはこれで問題ありません。全預金者が同じ日に引き出しに来ることはないからです。しかし「あの銀行は危ない」という不安が広がり、預金者が一斉に引き出しに来ると、貸出はすぐには現金にできないため、財務が健全な銀行でも払えなくなります。これが取り付け騒ぎです。

この弱点は、デジタル化でむしろ鋭くなっています。2023年3月に破綻した米国のシリコンバレー銀行では、スマートフォンから送金できるため、1日で預金の約4分の1が流出しました。窓口に並ぶ必要がない時代の預金は、昔よりずっと速く逃げます。銀行制度には、預金保険や中央銀行の最後の貸し手機能といった安全網が、この弱点への対策として組み込まれています。

銀行が傷むと、経済が傷む

銀行が経済の心臓であるがゆえに、その不調は経済全体に波及します。貸出先の破綻が続いて銀行の体力が落ちると、健全な企業への融資まで絞られる「貸し渋り」が起き、実体経済が冷え込みます。1990年代の日本の不良債権問題や、2008年の世界金融危機は、銀行部門の傷が経済全体の長い停滞につながることを示した実例です。だからこそ銀行は、自己資本の規制をはじめ、他の産業には見られない厚い規制と監督のもとに置かれています。預金者として見れば地味な存在ですが、「いつでも引き出せる約束」と「長く貸す商売」を両立させる綱渡りを、社会全体で支えている — それが銀行という制度の実像です。

試問

銀行が預金者と借り手のあいだに立つ8つの場面です。それぞれ、どの変換の働きでしょうか。

✦ 命題挑戦中

銀行が間に立つ8つの場面を、金額・満期・リスクと情報のどの変換に当たるかで仕分けよ

金額の変換小口を束ねて大口にする
満期の変換短く借りて長く貸す
リスクと情報の変換見極めと分散で危なさを加工する

項目を選んでから、入れる箱を選びます