記述統計●●○○○

相関

Correlation ・ そうかん

2つの変数が直線的に連動する度合いを-1から1の係数で表す考え方

✦ 30秒で試す — 航海たった1人を足すだけで、消えた相関がよみがえる入試の点が近い人だけに絞ると、相関は?予想してみる

概要

相関は、2つの変数が「連動して動く度合い」を表す考え方です。身長が高い人ほど体重も重い傾向がある、気温が上がるほどアイスの売上が伸びる——このような「片方が大きいとき、もう片方も大きい(または小さい)」という関係の強さを、−1から+1のひとつの数値(相関係数)に要約します。

相関係数が +1 に近いほど「一方が増えると他方も増える」直線的な関係が強く(正の相関)、−1 に近いほど「一方が増えると他方が減る」関係が強い(負の相関)ことを意味します。0 付近なら直線的な連動はほぼ見られません。本格的なモデルを作る前に「どの変数とどの変数が関係していそうか」の当たりをつける最初の道具として、データ分析の現場で日常的に使われています。

ただし相関係数は、散布図に描いた点の雲を1つの数に押しつぶした要約にすぎません。どんなデータの切り取り方をしたか、雲にどんな形や例外があるかで、同じ関係からまったく違う数字が出てきます。そして相関は「なぜ連動するのか」には何も答えません。この2つの限界を知って使うことが、相関という道具を使いこなす要点です。

なぜ生まれたか

代表値や分散と標準偏差は、1つの変数を要約する道具です。しかし現実の問いの多くは「親の身長と子の身長は関係するのか」「勉強時間と成績は結びつくのか」のように、2つの量の関係を扱います。関係の有無を散布図の目分量で判断するのではなく、誰が計算しても同じになる数値にしたい——この課題に取り組んだのが19世紀末のフランシス・ゴルトンでした。

ゴルトンは親子の身長の遺伝を調べる中で、2つの量の「共に変わる(co-relation)」度合いを測る方法を1888年に提案し、弟子のカール・ピアソンが1890年代にそれを「2変数のずれの積の平均(共分散)を、それぞれの標準偏差の積で割る」という形に仕上げました。これがピアソンの積率相関係数です。標準偏差で割ってあるので、身長をcmで測ってもmで測っても値は変わらず、単位の異なるどんな変数の組でも −1〜+1 の同じものさしで比べられます。この扱いやすさが、相関係数を統計学で最も広く使われる指標のひとつに押し上げました。

詳細

計算の考え方

相関係数の中身は、2変数版の分散である共分散です。各データ点について「x の平均からのずれ × y の平均からのずれ」を計算して平均します。x が平均より大きいとき y も平均より大きい(ずれの符号が揃う)点が多ければ共分散はプラスに、符号が逆になる点が多ければマイナスになります。共分散は単位に依存するので、x と y それぞれの標準偏差で割って −1〜+1 に規格化したものが相関係数 r です。言い換えると、x と y をそれぞれ標準化してから掛け合わせ、その平均を取ったものが r です。

r の大きさは「直線のまわりにどれだけ点が集まっているか」を表し、直線の傾きの大きさとは別物です。傾きがゆるやかでも点が直線にぴったり並んでいれば r は1に近く、傾きが急でも点がばらついていれば r は小さくなります。また r² は、回帰分析で x を使って y のばらつきの何割を説明できるかを表す決定係数に一致します。r = 0.5 は「半分説明できる」ではなく、r² = 0.25、つまり4分の1です。

散布図とセットで読む

相関係数は必ず散布図と一緒に見ます。同じ r = 0.8 でも、素直な直線的関係なのか、1個の外れ値が係数を吊り上げているだけなのかは、数値だけでは区別できないからです。

正の相関r が +1 に近い負の相関r が −1 に近い無相関r がほぼ 0曲線的関係関係はあるのに r は 0 近く相関係数が測れるのは「直線的な」連動だけ — 数値と散布図は必ずセットで見る
相関係数と散布図の対応 — 右端のような曲線的関係は、強く結びついていても r はゼロに近くなる

図の右端のように、相関係数が測るのは「直線的な」連動だけです。U字型のようなはっきりした関係があっても r はゼロに近くなるので、「r が低い = 関係がない」とは言えません。逆向きの落とし穴もあります。アンスコムの数値例として知られる4組のデータは、どれも r ≈ 0.82 ですが、1組は素直な直線、1組は曲線、1組は1点だけが外れた直線、1組は1点だけで相関が作られている縦一列のデータです。

範囲の制限 — 切り取り方で r は変わる

実務で最も気づかれにくい落とし穴が「範囲の制限」です。入学試験の点数と入学後の成績の関係を調べるとき、手元にあるのは合格者、つまり試験の点数が一定以上の人だけのデータです。x の幅が削られると、雲の形そのものは変わらなくても、y のばらつきのうち x で説明できる部分が小さくなり、相関係数は見かけ上小さくなります。

⚡ 体験: 合格者だけで測ると相関は消える
相関係数 r00.20.40.60.81全体0.60
全員の r0.60範囲内の r0.60範囲21〜99点人数200人

入試の点数(横)と入学後の成績(縦)。全体では r = 0.60 です。軸の上の金色の2つの丸を内側へ寄せて、「合格者」だけに絞ってみてください。

点線 = 全員での回帰直線、金の線 = 範囲内だけの回帰直線。範囲外の点は暗く表示

範囲を狭めていくと、同じ関係から計算した r がみるみる 0 に近づくのが分かります。「入試の点数は入学後の成績とほとんど相関しない、だから入試は役に立たない」という主張は、この効果を見落としている可能性があります。同じことは、採用試験と入社後の評価、ある年齢層だけを集めた調査など、選抜や絞り込みを経たデータで常に起こります。心理測定の分野では、選抜前のばらつきが分かっていれば元の相関を推定し直す補正式も使われています。逆に、極端な人だけを両端から集めると r は実際より大きく出ます。

部品の「極端な1人を足す」も試してください。範囲を狭めて相関がほぼ消えたデータに、遠く離れた1点を加えるだけで r は大きく跳ね上がります。r は平均からのずれの積の平均なので、遠い点ほど積が大きくなり、1点で全体を支配できてしまうのです。外れ値を疑うときや、分布が大きく歪んでいるときは、値そのものではなく順位どうしの相関を測るスピアマンの順位相関係数が頑健な代替になります(順位を使う手法の考え方はノンパラメトリック検定と共通です)。

もうひとつ、集計の単位にも注意が要ります。個人ごとには弱い相関しかない2つの変数でも、都道府県ごとの平均値どうしで相関を取ると、個人のばらつきが平均で消えるため r は非常に大きくなりがちです。これを生態学的相関と呼び、集計値の相関から個人の関係を推し量ると誤ります。

相関は因果ではない

相関を扱う上で最大の落とし穴が「相関関係と因果関係の混同」です。アイスの売上と水難事故の件数には強い正の相関がありますが、アイスが事故を起こすわけではありません。両方の背後に「気温」という共通の原因があるだけです。このように、2つの変数の両方に影響する第三の要因が見かけの相関を作る現象を交絡と呼びます。相関は「A と B が連動している」ことしか教えてくれず、A が B を引き起こすのか、B が A を引き起こすのか、第三の要因 C が両方を動かしているのか、単なる偶然なのかは区別できません。

因果を主張するには、相関とは別の道具が要ります。原因と疑う要因をくじ引きで割り当てて交絡を断ち切るランダム化比較試験や、観察データから交絡を調整して因果効果を推定する因果推論の手法がそれです。相関係数の高さだけを根拠に因果を語る言説は世の中にあふれており、「相関は因果ではない」はデータリテラシーの合言葉になっています。

実務での位置づけ

実務では、相関は探索の入口です。多数の変数の相関係数を一覧にした相関行列を眺めて有望な変数の組を見つけ、その先で回帰分析によって「x から y をどれだけ予測できるか」を定量化する、という流れが定番です。見つけた相関が偶然のばらつきで説明できないかどうかは、母集団と標本の考え方に基づく仮説検定(無相関検定)で確かめます。ただしデータが数万件あれば r = 0.03 のような実質的に意味のない相関でも「有意」になるので、有意かどうかより r の大きさと散布図の形を先に見るべきです。

r の大きさに「0.7以上なら強い」といった目安が語られることがありますが、分野によって普通の値は大きく異なります。物理の測定なら 0.99 でも不十分なことがあり、人の行動や社会のデータでは 0.3 でも実用的に大きな関係であることがあります。数字の大きさを絶対視せず、散布図と、データがどう集められたか(範囲の制限はないか、外れ値はないか、集計の単位は何か)とセットで読む——それが相関係数と付き合う基本姿勢です。

試問

200人の入試の点数(横軸)と入学後の成績(縦軸)の散布図です。横軸の2つのハンドルで入試の点数の範囲を選ぶと、その範囲の人だけで相関係数 r を計算します。範囲のハンドルと、「極端な1人を足す」ボタンを組み合わせて使います。

✦ 命題挑戦中

範囲を絞って相関を 0.3 未満に弱めたうえで、たった1人を足して r を 0.45 以上に押し戻せ

  • 範囲内に20人以上を残し、その人たちだけの r が 0.3 未満(いま 200人・0.60)
  • 極端な1人を足して、r を 0.45 以上にする(いま —)
⚡ 体験: 範囲を絞り、1人を足して r を動かす
相関係数 r00.20.40.60.81全体0.60
全員の r0.60範囲内の r0.60範囲21〜99点人数200人

入試の点数(横)と入学後の成績(縦)。全体では r = 0.60 です。軸の上の金色の2つの丸を内側へ寄せて、「合格者」だけに絞ってみてください。

点線 = 全員での回帰直線、金の線 = 範囲内だけの回帰直線。範囲外の点は暗く表示