記述統計●○○○○

散布図

Scatter Plot ・ さんぷず

2つの変数を縦横の座標に打ち、関係の形・外れ値・隠れたグループを目で捉える基本の図

✦ 30秒で試す — 航海相関ほぼゼロなのに、点ははっきりU字を描いている1人を加えた後の相関係数は?予想してみる

概要

散布図は、2つの変数の組を「横軸に一方、縦軸にもう一方」の座標として打ち、データを点の集まりとして描く図です。生徒ごとの「勉強時間と試験の点数」、店舗ごとの「広告費と売上」のように、1件のデータが2つの数値を持つとき、その1件を平面上の1点に対応させます。点の並び方を眺めるだけで、「一方が増えるともう一方も増えるのか」「関係は直線的か、途中で曲がるのか」「群れから外れた点はないか」「点がいくつかの塊に分かれていないか」が一度に目に入ります。

ヒストグラム(度数分布を棒で描いた図)や箱ひげ図が「1つの変数のばらつき」を見る道具だとすれば、散布図は「2つの変数の関係」を見る最初の道具です。相関係数のような数値の要約を計算する前に、まず散布図を描く——これはデータ分析の鉄則とされています。数値は関係を1つの数に押しつぶしますが、散布図は関係の形・外れ値・隠れたグループを、押しつぶさずにそのまま見せてくれるからです。

なぜ生まれたか

データを表に並べただけでは、2つの量の関係はほとんど読み取れません。数十行の数値の対を眺めて「片方が大きいときもう片方も大きい傾向がある」と見抜くのは、人間の認知には荷が重い作業です。散布図の原型は、1833年に天文学者ジョン・ハーシェルが二重星の観測値を平面に打って軌道を読み取った図だとされます。これを統計の道具に押し上げたのが19世紀後半のフランシス・ゴルトンで、「親の身長と子の身長」の対を平面に配置し、点の雲の形から関係の強さと向きを読み取りました。この観察がやがて相関係数と回帰分析という数値的な道具に結晶します。散布図は、統計学の中核概念が生まれる母体になった図なのです。

数値の要約が発達した後も、散布図の役割は失われませんでした。むしろ逆です。1973年、統計学者フランシス・アンスコムは、平均・分散・相関係数・回帰直線がほぼ同じなのに、描くとまったく違う姿をした4組のデータ(アンスコムの数値例)を発表し、「計算の前に描け」と訴えました。計算機で要約統計が一瞬で出せる時代になったからこそ、数字だけを見て関係を語る危うさが増し、散布図は「数字を疑うための図」としての地位を固めていきます。

詳細

点の雲の読み方 — 向き・形・広がり・例外

散布図を読むときは、点の雲の「向き」「形」「広がり」「例外」の4つに注目します。右上がりに並べば正の関係(一方が増えるともう一方も増える)、右下がりなら負の関係、向きが見えなければ関係は弱いといえます。次に形です。直線に沿っているか、途中で頭打ちになるか、U字を描くか。相関係数が測るのは直線的な関係だけなので、U字のような曲がった関係は r がほぼ0でも「関係なし」ではありません。広がりにも情報があります。x が大きくなるほど縦の散らばりが広がる「ラッパ型」の雲は、ばらつきが一定でないことを示し、そのまま直線を当てはめると誤差の見積もりを誤ります。そして例外——群れから外れた点や、雲の中の不自然な空白です。

⚡ 体験: 数字は同じ、絵はちがう
形
要約統計(楕円の雲)x の平均50.00y の平均50.00x の標準偏差16.00y の標準偏差18.00相関係数 r0.30+ 平均の位置- - 回帰直線 y = 33.1 + 0.34x

上の形のボタンを押してください。点が別の形へ移っていきますが、要約統計の数字(平均・標準偏差・相関係数)を見張っていてください。

どの形も 80 点。x・y の平均と標準偏差、相関係数、回帰直線(点線)が小数第2位まで一致するように作ってあります

この部品の6つの形は、x・y それぞれの平均と標準偏差、相関係数、回帰直線が小数第2位まで一致するように作ってあります。アンスコムの数値例を現代的に拡張した「Datasaurus(データザウルス)」と同じ仕掛けです(アルベルト・カイロが2016年に恐竜の絵で示し、翌年マテイカとフィッツモーリスが同じ要約統計のまま形を変える方法を発表しました)。要約統計は「どんな形か」について何も保証しません。相関係数 0.30 と報告されたデータが、ゆるい右上がりの雲なのか、2本の線の混ざった×印なのか、4つのグループの縞なのかは、描くまで分からないのです。

数値の要約が見落とす3つの構造

散布図でしか見えない構造のうち、実務で特に問題になるものを3つ並べます。

1点のてこ効果グループが混ざると逆転重ね描きで密度が消える不透明半透明r = 0.15 → 1点足すと 0.69直線が外れ値に引き寄せられる各グループ内は右下がり全体の直線(破線)は右上がり同じ点でも、濃淡を付けると中心の密集が見える
散布図でしか見えない3つの構造 — 1点のてこ効果、グループの混在による逆転、重ね描きによる密度の消失

1つ目は、1点の「てこ」の効果です。x が群れから遠く離れた点は、回帰直線を自分の方へ強く引き寄せます。図の左では、ほぼ無関係な14点に1点を足すだけで相関係数が 0.15 から 0.69 に跳ね上がりました。こうした点は外れ値の中でも特に影響力が大きく、除くか残すかで結論が変わります。数値だけを見ていると、その「強い相関」がたった1点の産物であることに気づけません。

2つ目は、隠れたグループの混在です。図の中央では、3つのグループそれぞれの中では右下がりなのに、まとめて直線を引くと右上がりになっています。全体の傾向とグループ内の傾向が逆転するこの現象はシンプソンのパラドックスと呼ばれ、グループを分けている第三の変数が両方の変数に影響している(交絡している)ときに起こります。雲が塊に分かれて見えたら、店舗の業態・年代・製品の系列など、グループを表す変数で色分けして描き直すのが定石です。どちらの傾向が「正しい」かは図だけでは決まらず、因果の構造を考える必要があります。

3つ目は、重ね描き(オーバープロッティング)です。点が数千、数万と増えると、点どうしが重なって真っ白(または真っ黒)な塊になり、どこに点が密集しているかが消えてしまいます。図の右は同じ点を不透明と半透明で描いたもので、半透明にすると中心の密集が浮かび上がります。点を半透明にする、少しだけずらして重なりをほどく(ジッター)、平面を六角形のマス目に区切って点の数を色で表す(ヘックスビン)、密度の等高線を描く、といった対処があります。値が整数しか取らないデータ(5段階評価など)では点が格子の上でぴったり重なるので、特に注意が必要です。

実務での使いどころと描き方の注意

散布図が最も活躍するのは分析の初期、探索的データ分析の段階です。気になる変数の組を片っ端から描いて、関係の形・外れ値・グループ構造に当たりを付けてから、相関係数の計算やモデル作りに進みます。変数が多いときは、すべての組み合わせの散布図を格子状に並べた散布図行列が便利です。モデルを作った後も、予測値と残差の散布図を描いて当てはまりの悪いところを探す、という形で使い続けます。

描き方にもいくつか注意があります。年収や人口のように右へ長く裾を引く変数は、そのまま描くと大部分の点が左下に押し込められるので、対数軸にすると関係が見やすくなります。縦横の軸の範囲や縦横比を変えると、同じデータでも関係が強くも弱くも見えるため、比較する図どうしは軸を揃えます。3つ目の変数を点の色や大きさで表すこともできますが(点の大きさで表すものはバブルチャート)、面積の比較は人間の目には不正確なので、正確に比べたい量は位置に割り当てるのが原則です(データ可視化の原則)。

最後に道具の使い分けです。散布図が力を発揮するのは両軸とも量的な変数のときで、尺度水準でいう質的な変数どうしの関係にはクロス集計を使います。また散布図は「一緒に動く」ことを見せるだけで、どちらが原因かは教えてくれません。点の雲がきれいな右上がりでも、それは相関の発見であって因果の証明ではない——この区別を忘れなければ、散布図は最も単純で、最も誠実な分析の出発点であり続けます。

試問

✦ 命題挑戦中

8つの散布図の観察を、そこに潜んでいる構造で仕分けよ

1点のてこ1点が直線を引き寄せる
グループの混在塊ごとに傾向が違う
重ね描き点が重なって密度が消える
曲がった関係直線では測れない

項目を選んでから、入れる箱を選びます