記述統計●○○○○

尺度水準

Levels of Measurement ・ しゃくどすいじゅん

データを名義・順序・間隔・比率の4水準に分類し、使える集計・分析を決める枠組み

✦ 30秒で試す — 航海気温20℃は10℃の2倍、とは言えないのに身長なら言える「0.4秒は0.2秒の2倍」「2000年は1000年の2倍」。意味があるのは?予想してみる

概要

尺度水準は、データを「名義尺度・順序尺度・間隔尺度・比率尺度」の4つの水準に分類する枠組みです。血液型のような「区別しかできない値」と、身長のような「引き算も割り算もできる値」では、同じ数字に見えても許される計算がまったく違います。尺度水準は、目の前のデータに対して「平均を取ってよいか」「差に意味があるか」「2倍と言ってよいか」を判定するためのものさしです。

分析の入口でこの分類を意識すると、その後に選ぶべき集計方法やグラフ、統計手法が自然に絞られます。たとえばアンケートの「満足度 1〜5」は数字で記録されていても順序尺度であり、平均値の扱いには注意が必要です。逆に、郵便番号や社員IDは数字の見た目をしていても名義尺度であり、大小比較にすら意味がありません。「数字だから計算できる」とは限らない — この当たり前だけれど見落としやすい事実を体系化したのが尺度水準です。

統計学の教科書で最初に登場する概念でありながら、実務でのデータ分析、アンケート設計、機械学習の特徴量設計まで、データを扱うあらゆる場面で判断の土台になります。ただし後で見るように、「この水準ならこの手法しか使えない」という機械的な規則として使うと、かえって判断を誤ることもある、という批判も含めて理解しておくべき枠組みです。

なぜ生まれたか

この分類を定式化したのは、心理学者スタンレー・スティーヴンスによる1946年の論文です。背景には、当時の科学界で続いていた「感覚は測定できるのか」という論争がありました。音の大きさの感じ方や知能テストの点数は、長さや重さと同じ意味で「測定」と呼べるのか。1930年代にイギリス科学振興協会が設けた委員会では、物理学者たちが「足し算が成り立たない量の測定は測定ではない」と主張し、心理学者たちは反論に窮していました。

スティーヴンスの答えは、「測定にはいくつもの水準があり、水準ごとに許される操作が異なる」という発想の転換でした。測定とは「規則に従って対象に数値を割り当てること」であり、その規則の強さに応じて名義・順序・間隔・比率の4水準がある。水準を分ける基準は、「どんな変換をしても意味が変わらないか」です。名義尺度は番号を付け替えても(1対1なら)意味が変わらず、順序尺度は順番を保つ変換なら何をしてもよく、間隔尺度は「a倍してbを足す」変換(摂氏から華氏への換算)までしか許さず、比率尺度は単位の変更(mからcmへ)しか許さない。そして統計処理は、その変換をしても結論が変わらない操作だけを使うべきだ — この整理によって、「数値化されたデータ」と「そのデータに適用できる分析」の対応関係が初めて明文化されました。今日「順序尺度に平均を使ってよいか」といった議論ができるのは、この枠組みのおかげです。

詳細

4つの水準 — 上に行くほど「できる計算」が増える

4つの水準は、下から順に情報の豊かさが増していく階層構造をなしています。上の水準は下の水準の性質をすべて含むため、「比率尺度のデータは順序尺度として扱うこともできるが、逆はできない」という片方向の関係が成り立ちます。下の2つ(名義・順序)がカテゴリを表す質的データ、上の2つ(間隔・比率)が数値として計算できる量的データです。

名義尺度区別のみ(= / ≠) 例: 血液型・都道府県・ユーザーID順序尺度+ 大小比較(< / >) 例: 満足度1〜5・成績の順位・震度↑ 量的データ↓ 質的データ間隔尺度+ 差の計算(+ / −) 例: 摂氏温度・西暦 ※ゼロは便宜的比率尺度+ 比の計算(× / ÷) 例: 身長・金額・処理時間 ※絶対ゼロあり情報が豊か許される変換: 比率 = 単位の変更だけ / 間隔 = 一次変換 / 順序 = 順番を保つ変換
尺度水準の4階層 — 上の水準ほど許される演算が増え、下の水準の性質をすべて含む。質的と量的の境目は順序尺度と間隔尺度のあいだ

名義尺度は、値がカテゴリの「ラベル」でしかない水準です。血液型のA型とB型は区別できますが、大小も差もありません。できる集計は件数と割合、代表値は最頻値だけです。順序尺度は大小の順序が加わった水準で、満足度の5段階評価や震度が典型です。「4は2より上」とは言えますが、「4と3の差」が「2と1の差」と同じ大きさだとは保証されません。代表値には中央値が使えます。

間隔尺度は目盛りの間隔が等しく、差の計算に意味がある水準です。摂氏温度の「20度と25度の差」は「0度と5度の差」と同じ5度です。ただしゼロ点は人間が便宜的に決めたものなので、「20度は10度の2倍暑い」とは言えません(華氏に直すと68度と50度で、比は2倍になりません)。比率尺度は「無」を意味する絶対的なゼロを持ち、比の計算まで意味がある水準です。身長200cmは100cmの2倍であり、売上ゼロは本当に売上が無いことを意味します。温度も絶対温度(ケルビン)で測れば比率尺度になります。

尺度が決める「使える道具」

尺度水準の実用的な価値は、集計・可視化・分析の選択を絞り込めることにあります。代表値なら、名義尺度は最頻値、順序尺度は中央値、間隔尺度以上で平均が正当化されます。2変数の関係を見るときも、質的変数どうしならクロス集計、量的変数どうしなら散布図と相関、というように尺度が手法を導きます。順序尺度には、値そのものではなく順位だけを使うノンパラメトリック検定やスピアマンの順位相関が用意されています。順位は「順番を保つ変換」をしても変わらないので、順序尺度と相性がよいのです。グラフ選びも同様で、名義尺度のカテゴリを折れ線グラフでつなぐ(存在しない「間の値」を暗示してしまう)のはデータ可視化の典型的な誤りです。

実務での境界線 — リッカート尺度と「数字の顔をした名義尺度」

実務で最も悩ましいのは順序尺度と間隔尺度の境界です。アンケートの5段階評価(リッカート尺度)は厳密には順序尺度で、「満足度の平均3.7」は本来正当化しにくい計算です。なぜ正当化しにくいのかは、数値の割り当てを変えてみるとよく分かります。「とても不満=1 … とても満足=5」という等間隔の割り当ては人間が決めた約束にすぎず、順番さえ守れば「とても不満=0」でも「とても満足=6」でも、回答の意味は同じはずです。ところが平均は、この割り当て方しだいで店どうしの大小が逆転することがあります。

⚡ 体験: 順序尺度に数値を割り当てる
割り当て
A店B店とても不満不満ふつう中央値 A満足中央値 Bとても満足A平均 3.35B平均 3.50
平均で比べるとA店 < B店中央値で比べるとA店 < B店(不変)

下の数直線の5つの丸は「とても不満=1 … とても満足=5」という数値の割り当てです。順番を守ったまま動かして(たとえばいちばん左の丸を 0 の近くへ)、A店とB店の平均の大小がどうなるか見てください。

上: 5段階の回答(●=1人、各店20人)。下: 各段階に割り当てた数値と、その数値で計算した平均(▼A店 ▲B店)

部品で確かめたとおり、真ん中に回答が集まる店と、両端に回答が分かれる店を比べると、端のカテゴリの「数値としての位置」をわずかに動かすだけで平均の勝ち負けが入れ替わります。一方、中央値のカテゴリはどんな割り当てでも変わりません。スティーヴンスが「順序尺度には中央値」と言ったのは、この意味です。それでも実務や研究では「段階の間隔はおおむね等しい」とみなして平均や分散を計算することが広く行われていますし、複数の設問を合計した尺度得点では間隔尺度に近づくことも知られています。大切なのは、これが「近似として割り切っている」と自覚することです。回答が両端に分かれているとき、比べる群の回答の形が違うときほど平均は割り当てに敏感になるため、段階ごとの割合や中央値を併記するのが安全です。

逆方向の罠が「数字の顔をした名義尺度」です。郵便番号・商品コード・アンケートの選択肢番号(1=はい、2=いいえ など)は、データファイル上は数値でも名義尺度です。集計ツールや機械学習ライブラリは尺度水準を知らないため、指示すれば郵便番号の平均でも平然と計算します。機械学習では、名義尺度のカテゴリを 1, 2, 3 と番号のまま特徴量に入れると、モデルが「3は1の3倍」という存在しない関係を学んでしまうため、カテゴリごとに0/1の列を作るワンホット符号化などで数値化します。分析の前に各列の尺度水準を確認する作業は、探索的データ分析の最初の一歩です。

尺度論への批判 — 分類は「データ」ではなく「問い」に宿る

スティーヴンスの枠組みは広く受け入れられた一方、「水準で使える統計手法を決める」という規則としての使い方には早くから批判がありました。1953年にはロードが、背番号の平均を計算して「番号の配り方に偏りがあるか」を調べる寓話を書き、数字自体は何の尺度かを知らないのだから、問いに対して意味のある答えが出るなら計算してよいと皮肉りました。1993年にはベルマンとウィルキンソンが、4分類は現実のデータの多様性(割合、個数、上限のある量、角度など)をとらえきれず、「この水準だからこの手法」と機械的に選ぶと、かえって誤った分析に導くと論じています。

この批判の要点は、尺度水準がデータそのものの性質ではなく、「データに何を問うか」によって決まる、ということです。郵便番号は住所の区別としては名義尺度ですが、番号の並びが地理的な近さとある程度対応していることを利用するなら、別の使い方もあり得ます。反応時間は比率尺度ですが、「処理の難しさ」の指標として使うなら、その関係は直線的ではないかもしれません。尺度水準は「この計算の結果は、数値の付け方という恣意的な選択に左右されないか」を点検するためのチェックリストとして使うのが、いちばん実りのある付き合い方です。

なお、量的データはさらに「離散型(人数のように飛び飛びの値)」と「連続型(身長のように切れ目のない値)」に分けられ、この区別は度数分布とヒストグラムでの階級の切り方や、確率分布の種類の選択につながっていきます。

試問

データには、数字で書かれていても足し引きや割り算に意味があるものと、無いものがあります。統計ではこれを尺度水準と呼び、区別だけの名義尺度、順番に意味がある順序尺度、差に意味がある間隔尺度、比にも意味がある比率尺度の4段階に分けます。

✦ 命題挑戦中

8つのデータを、尺度水準の4つの箱に仕分けよ

名義尺度区別だけ
順序尺度順番に意味がある
間隔尺度差に意味がある
比率尺度比にも意味がある

項目を選んでから、入れる箱を選びます