インデックスファンド
Index Fund ・ いんでっくすふぁんど
株価指数と同じ中身を持ち、市場の平均を低いコストで丸ごと受け取る投資信託。パッシブ運用の代表
✦ 30秒で試す — 航海平均を買うだけの投資に、選び抜いたはずのファンドが負ける20年後に指数に勝っているのは何本?予想してみる概要
インデックスファンドは、TOPIXやS&P 500のような株価指数(インデックス)と同じ値動きになるように作られた投資信託です。指数とは、市場に上場する多数の株式の価格をまとめて1つの数字にした「市場全体の体温計」で、インデックスファンドはその体温計の中身と同じ比率で株式を持ちます。個別の勝ち馬を選ぶのではなく、市場を丸ごと1パックにして買う商品です。
魅力はシンプルさと安さです。どの銘柄が上がるかを調べて予想する必要がないので運用の手間が小さく、投資家が毎年払う手数料(信託報酬)は、日本の代表的な商品では年0.1%前後かそれ以下と、専門家が銘柄を選ぶアクティブファンド(年1〜2%程度が多い)の数分の一から十分の一で済みます。しかも1本買うだけで数百〜数千銘柄への分散投資が完成します。米国では、投資信託とETF(上場投資信託)の資産でインデックス型(パッシブ運用)がアクティブ型を上回り、日本でも2024年に始まった新しいNISAの「つみたて投資枠」の中心的な商品になっています。
なぜ生まれたか
かつて投資信託といえば、ファンドマネージャーが有望な銘柄を選び抜いて市場平均を上回ることを目指す、アクティブ運用が当たり前でした。ところが1960年代以降、成績のデータを検証した研究が不都合な事実を突きつけます。手数料を差し引いた後で市場平均に勝ち続けるプロは、ごくわずかしかいなかったのです。背景にあるのが効率的市場仮説です。株価には公開情報がすぐに織り込まれるので、他人より賢く売買して儲け続けるのは極めて難しい。ならば、高い手数料を払って平均に負ける勝負を挑むより、最初から平均そのものを最低のコストで買うほうが合理的ではないか — これがインデックスファンドの発想です。
最初の指数連動の運用は、1971年にウェルズ・ファーゴ銀行が企業年金向けに始めたものです。経済学者ポール・サミュエルソンは1974年に「誰か指数ファンドを作れ」と挑発し、バートン・マルキールも1973年の『ウォール街のランダム・ウォーカー』で同じ主張をしました。これを個人向けの商品にしたのが、バンガード社を創業したジョン・ボーグルです。1976年の世界初の個人向けインデックスファンドは「勝とうとしない投資」として業界から「ボーグルの愚行」と嘲笑され、当初の募集額は目標に遠く届きませんでした。しかし低コストの複利の効果が数十年かけて成績の差として現れるにつれて評価は逆転し、いまや世界の資産運用の主流になりました。学問上の仮説が、そのまま商品として実装されて世界を変えた珍しい例です。
詳細
仕組み — 指数への「連動」をどう作るか
多くの株価指数は時価総額加重、つまり企業の規模(株価×発行済み株式数)に比例した重みで作られています。インデックスファンドは集めた資金で、指数と同じ銘柄を同じ比率で買います。時価総額加重には運用上の大きな利点があります。株価が動くと指数の中の比率も同じだけ動くので、ファンドは売買しなくても自然に指数と同じ比率のまま保たれるのです。売買が少ないことは、手数料だけでなく売買のコストと税負担も抑えます。実際のファンドには指数との小さなずれ(トラッキングエラー)が生じ、その小ささが商品の品質の目安になります。取引所で株のように売買できるETF(上場投資信託)も、中身の多くはインデックス運用です。
なお、指数にも種類があります。TOPIXやS&P 500は時価総額加重ですが、日経平均株価は株価そのものを平均する方式で、株価の高い一部の銘柄(値がさ株)の値動きが指数を大きく動かします。「何を買っているのか」は、ファンドの名前ではなく指数の作り方で決まります。
アクティブ運用の算術 — 「平均でよい」の裏付け
「平均を買うだけで本当にいいのか」という疑問には、単純な算数の答えがあります。市場に参加する全投資家の持ち分をすべて合計すれば、市場全体そのものです。つまりコストを引く前の段階で、全投資家の平均リターンは定義上ちょうど市場平均になります。誰かが平均に勝てば、必ず誰かが同じだけ負けています。そこからコストを引けば、コストの高い運用ほど平均的に不利になる — シャープが1991年に「アクティブ運用の算術」と呼んだこの論理は、市場が効率的かどうかにすら依存しません。
実際の成績もこの算術に沿っています。S&Pダウ・ジョーンズ・インデックスが毎年公表する比較(SPIVA)では、米国の大型株のアクティブファンドのうち、20年間でS&P 500を下回ったものはおおむね9割前後で推移しています。しかも前の期間に勝ったファンドが次の期間も勝ち続ける傾向は弱く、「勝つファンドを事前に選ぶ」ことも難しいのです。
コストの差は複利で膨らむ
年1%余りの手数料の差は一見ささいですが、複利の働きで長期には大きな差になります。市場が年5%で育つとして、手数料0.1%なら手取りは年4.9%、1.5%なら年3.5%です。30年後、前者は元本の約4.2倍、後者は約2.8倍 — 運用の腕前がまったく同じでも、最終資産に3割以上の差が付きます。ボーグルはこれを「コストは確実に差し引かれる」と表現しました。市場に勝てるかは不確実ですが、コストが低いことは確実です。
世界の主流になった — 米国の逆転と新NISA
モーニングスターの集計では、米国の投資信託とETFの資産で、2023年末にインデックス型がアクティブ型を初めて上回り(2024年1月に公表)、2024年末には約53%まで比率を広げました。日本では2024年1月に新しいNISA(少額投資非課税制度)が始まり、年120万円までの「つみたて投資枠」と年240万円までの「成長投資枠」を合わせて、生涯1,800万円まで運用益が非課税になりました。つみたて投資枠で買える投資信託は、金融庁が長期・積立・分散に向くと定めた基準(手数料の上限など)を満たすものに限られ、その大半が指数連動のインデックスファンドです。全世界株式や米国株式の低コストなインデックスファンドを毎月定額で積み立てるのが、個人の資産形成の定番の型になりました。
インデックス化が進んだ市場の副作用
パッシブ運用が広がるほど、新しい論点も出てきます。第一は集中です。時価総額加重の指数では、値上がりした巨大企業ほど比率が自動的に増えます。S&P 500では、上位10社の比率が2024年末に約4割に達しました(それまでの数十年はおおむね2割前後)。「500社に分散しているつもりが、実は上位の数社の値動きに大きく左右される」ことになり、バブルの局面では過熱した銘柄を多く抱えることにもなります。
第二は指数の入れ替えの効果です。ある銘柄が主要指数に採用されると決まると、連動する全ファンドが一斉に買う必要があるため、発表時に株価が跳ねる現象が知られています(シュライファーの1986年の研究では数%)。先回りして買う投資家に、インデックス投資家がわずかなコストを払っている形で、最近は効果が小さくなったとも言われます。
第三はただ乗りです。インデックスファンドは、株価を「正しい値段」に押し上げたり押し下げたりする作業を、アクティブな投資家に任せています。全員がインデックス運用になれば誰も企業を分析しなくなり、価格は情報を映さなくなります(グロスマンとスティグリッツの指摘)。現実には、パッシブが増えるほどアクティブが見つけられる歪みも増えるので、どこかで釣り合うと考えられています。加えて、巨大な運用会社が多くの企業の大株主を兼ねることが、企業どうしの競争や株主としての議決権の使い方にどう影響するかも議論されています。
実務での使いどころと落とし穴
インデックスファンドは市場平均に連動するだけで、暴落からは守ってくれません。市場が半分になればファンドも半分になります。株式だけでなく債券との組み合わせや、生活資金を別に取っておくことで、暴落の年を売らずに乗り切れる設計にしておくことが大切です。また、「インデックス」と名の付く商品がすべて低コストとは限りません。テーマ型の指数など、中身が実質的にアクティブ運用に近く手数料も高い商品もあります。リスクとリターンの関係は消えないので、インデックスファンドでもリターンの源は市場全体のリスクを負うことです。市場平均を、できるだけ低いコストで、長く持つ — この原則から外れていないかが、商品選びの一貫した判定基準になります。
試問
腕前ゼロのアクティブファンドを100本用意します。どのファンドも、市場の平均から毎年ばらばらに上下にずれます(ずれの大きさは年5%程度)が、平均すれば市場と同じ — ただし手数料は年1.5%です。比べる相手は、手数料が年0.1%のインデックスファンドです。
手数料1.5%・腕前ゼロのアクティブファンド100本のうち、20年後に手数料0.1%のインデックスを上回っているのはおよそ何本か。予想してから実験で確かめよ
100本のうち、20年後にインデックスに勝っているのはおよそ何本?(5本刻み)
