調号
Key Signature ・ ちょうごう
曲の調を五線の冒頭の♯♭の組で宣言する記法。調と記譜をつなぐ蝶番
✦ 30秒で試す — 航海楽譜の頭に並ぶ♯の数だけで、曲の中心の音が分かるラが中心の暗い響きのイ短調。調号は?予想してみる概要
調号は、五線譜の各段の冒頭、音部記号のすぐ右に置かれる♯や♭のまとまりのことです。「この曲(この部分)では、ここに書いた音は常に半音上げて/下げて演奏する」という宣言で、たとえばファとドの位置に♯が2つ並んでいれば、曲中のすべてのファとドは断りなくファ♯・ド♯として読みます。楽譜を開いて最初に確認するものが調号だ、と言われるほど基本的な情報です。
調号の役割は単なる省略記法にとどまりません。♯・♭の組は調と一対一に近い対応を持つため、調号は「この曲はニ長調です」という調の宣言としても機能します。演奏者は調号を見た瞬間に、使われる音階、中心となる和音、指づかいの地形を先読みできます。調号は、抽象的な調の概念と紙の上の記譜をつなぐ蝶番なのです。
なぜ生まれたか
もし調号がなかったら、と考えてみます。ト長調の曲ではファがすべてファ♯になりますから、曲中に現れる何十・何百のファ全部に臨時記号の♯を書き付けなければなりません。書き手にも読み手にも膨大な無駄で、しかも書き漏らしはそのまま演奏ミスになります。中世〜ルネサンスの楽譜では実際、シに付ける♭程度しか前置されず、多くの変化音は書かれずに歌い手の判断(ムジカ・フィクタと呼ばれる慣習)に委ねられていました。曲がひとつの旋法の内側にとどまっていた時代は、それでもなんとかなったのです。
しかし調性音楽が確立し、どの音からでも長音階・短音階を始められるようになると、調ごとに決まった音を恒常的に変化させる必要が生じました。「この調では常にこの音たちが変化する」という規則性を冒頭で一度だけ宣言してしまえばよい — こうして楽譜の頭に♯・♭をまとめて前置する調号の記法がバロック期までに定着し、12の調すべてを行き来する音楽の実用的な基盤になりました。
詳細
♯と♭が増えていく順序
調号の♯・♭は、好きな音に好きな数だけ付くのではなく、厳密に決まった順序で1つずつ増えていきます。♯はファ→ド→ソ→レ→ラ→ミ→シの順、♭はその正反対のシ→ミ→ラ→レ→ソ→ド→ファの順です。この順序は恣意的な取り決めではなく、調そのものが完全5度ずつ移動して生成されることの直接の反映です。ハ長調の長音階を完全5度上のソから始め直すと、パターンを保つために必要な変化はファ♯の1個だけ。さらに5度上のレから始めるとド♯が加わる — 調が5度進むたびに♯がちょうど1個増えるのです。♭側も同様に、5度下(ヘ長調、変ロ長調…)へ進むたびに♭が1個ずつ増えます。
この構造をハ長調を頂点とする円環に描き直したものが五度圏です。調号の♯・♭の数はそのまま五度圏上の位置を表し、調号を読むことは五度圏上の現在地を読むことと同じです。
♯・♭が五線のどの高さに書かれるかも決まっています。ト音記号の五線では、♯はファ(第5線)から始まって「4度下・5度上」をおおむね交互に繰り返し、♭はシ(第3線)から始まって「4度上・5度下」をきれいに交互に繰り返します。♯の列で1か所だけ(レ→ラ)続けて下がるのは、ラ♯を五線の上にはみ出して書かないためです。この形は五線譜を読む人の目に焼き付いているので、数を数えなくても「ギザギザの形」で調号を見分けられるようになります。
調号の読み方と実務のコツ
初見で調号から調を割り出すには定番の近道があります。♯系では「いちばん右(最後)の♯の半音上が主音」— ♯がファ・ドの2つなら、最後のド♯の半音上でニ長調です。♭系では「最後からひとつ手前の♭がそのまま主音」— ♭がシ・ミ・ラの3つなら、手前のミ♭が主音で変ホ長調です(♭1つのヘ長調だけは暗記します)。ただしここに重要な注意があります。調号は長調と短調を区別しません。同じ調号を共有する長音階の調と短音階の調(平行調)が必ず1組あり、♯2つはニ長調かもしれずロ短調かもしれません。どちらの調かは、調号だけでなく曲の終止の音や和声から判断します。特に短調では導音の♯(イ短調のソ♯など)が調号に含まれず臨時記号として現れるため、「調号外の♯が頻出する」こと自体が短調のサインになります。
この2つの規則には理由があります。♯系では、新しく足される♯は常にその調の第7音、つまり主音の半音下の導音です。♭系では、新しく足される♭は常にその調の第4音(主音の完全4度上)なので、ひとつ手前の♭が主音になります。下の部品で調を選ぶと、調号が決まった順に1つずつ書き込まれ、変わる音が鍵盤で光って鳴り、最後にその規則で主音が示されます。
まず ♯の段の「D」を押してください。五線に調号が決まった順に1つずつ書き込まれ、そのたびに変わる音が鍵盤で光って鳴ります。
臨時記号との分業、そして書き換え
調号と臨時記号は明確に分業しています。調号は段の頭で宣言され、そのオクターブに限らずすべての同名音に、次の調号変更まで効き続けます。一方、臨時記号はその小節内・その音の高さに限って調号を一時的に上書きします。この分業のおかげで、楽譜は「基調となる音の集合」と「そこからの一時的な逸脱」を視覚的に区別できます。逸脱が一時的なら臨時記号で済ませ、転調して長く続くなら複縦線を引いて調号自体を書き換える — 調号の書き換えは、聴き手ではなく読み手に向けた「ここから世界が変わる」という宣言です。
実務での落とし穴もいくつかあります。第一に、調号の♯・♭は五線上の決まった位置・決まった順序で書くのが規則で、順序を崩すと読み手が混乱します。第二に、移調楽器(B♭管のトランペットなど)のパート譜では、実音とは異なる調号が書かれるため、スコアを見るときは段ごとに調号が違うのが正常です。第三に、♯6個の嬰ヘ長調と♭6個の変ト長調のように、鍵盤上は同じ音でも記譜が異なる異名同音の調があり、どちらで書くかは前後の調との関係や読みやすさで選ばれます。調号を「暗記表」ではなく「5度ずつ移動する調の座標系」として理解しておくと、こうした場面でも迷わなくなります。
試問
調号は、その調の音階でいつも♯や♭の付く音を楽譜の頭にまとめたものです。長調は「全・全・半・全・全・全・半」の間隔で7音を並べた音階で、短調は、ある長調と同じ7音を、その長調の6番目の音から並べ直した音階です。6つの調を、調号の違いで仕分けます。
6つの調を、調号なし・♯1つ(ファ♯)・♭1つ(シ♭)に仕分けよ
項目を選んでから、入れる箱を選びます
