音程
Interval ・ おんてい
2つの音の高さの隔たり。協和と不協和を生む、音楽理論の最小部品
✦ 30秒で試す — 航海ドとソ、レとラ。高さは違うのに、同じ響きがするシとファを同時に鳴らすと、どんな響き?予想してみる概要
音程とは、2つの音の高さの隔たりのことです。「ドとソはどれくらい離れているか」を測る、いわば音の世界のものさしです。日常語では「音程が外れる」のように音高そのものの意味で使われがちですが、理論用語としての音程は必ず「2音間の距離」を指します。
音楽の響きの性格は、音の絶対的な高さよりも、この「隔たり」によって決まります。ドとソを一緒に鳴らしても、レとラを一緒に鳴らしても、同じ「完全5度」という音程なので同じ性格の響きがします。だからこそ音程は、音階の設計図にも和音の構造の説明にも登場する、音楽理論の最小部品なのです。
なぜ生まれたか
「2つの音の隔たりに種類があり、よく響く組み合わせとそうでない組み合わせがある」ことを最初に体系化したのは、紀元前6世紀の古代ギリシャのピタゴラス学派だと伝えられています(その数の考え方はのちにピタゴラス音律へ発展します)。彼らは一本の弦を張った実験装置(モノコード)で、弦の長さと音の高さの関係を調べました。すると、弦の長さを1:2にすると美しく溶け合う音(オクターブ)、2:3にすると次によく溶け合う音(完全5度)、3:4でもよく響く音(完全4度)が得られる — 心地よい響き — 協和 — の背後に単純な整数比が隠れていることを発見したのです。
これは「なぜある響きは美しく、ある響きは濁るのか」という感覚的な問いに、初めて客観的な説明を与えた出来事でした。響きの美しさが数で説明できるなら、音の隔たりを分類し、名前を付け、組み合わせの理論を作れる — 音程の概念は、音楽を感覚の世界から理論の世界へ持ち込んだ入り口であり、西洋音楽理論の2500年はここから始まったといえます。
詳細
半音と全音 — 最小単位
現代の音程の最小単位は半音です。ピアノでいえば、黒鍵も含めて隣り合う鍵盤の隔たりが半音(ミとファ、シとドは白鍵同士でも半音)で、半音2つ分が全音です。1オクターブは半音12個分にあたります。あらゆる音程は「半音いくつ分か」で正確に表せるので、まずこの数え方を土台にします。
度数 — 音名で数える距離
実際の音楽の現場では、音程は「度」という単位で呼ばれます。度数は音名の階段を、出発点を1と数えて何段目かで測ります。ドから見てド自身は1度、レは2度、ミは3度、ソは5度、1オクターブ上のドは8度です。「0度」から始めない点に注意してください — ドとレの隔たりは「1度」ではなく「2度」です。
ただし度数だけでは隔たりを言い切れません。ドからミ(半音4つ)もドからミ♭(半音3つ)も同じ「3度」だからです。そこで半音数の違いを「長・短・完全・増・減」という言葉で区別します。半音4つの3度は長3度、半音3つは短3度と呼び分けます。1・4・5・8度は「完全」系(完全5度など)、2・3・6・7度は「長・短」系に分類され、そこからさらに半音広いと「増」、狭いと「減」が付きます。
鍵盤を押して、金色の基準音からの距離を耳と目で確かめてみてください。半音を1つずつ増やしていくと、響きが「溶け合う→ぶつかる→また溶け合う」と揺れ動くのが分かります。
鍵盤を押すと、金色の基準音との「距離」が鳴ります。まずは隣の鍵から順に押していき、距離が1つ増えるごとに響きがどう変わるかを聴いてください。
協和と不協和 — 響きの性格
音程は響きの溶け合い方によって性格づけられます(詳しくは協和と不協和)。ピタゴラスの整数比に対応する完全8度・完全5度・完全4度は完全協和音程と呼ばれ、透明でよく溶け合いますが、単独ではやや空虚な響きです。長・短の3度と6度は不完全協和音程で、豊かで甘い響きを持ち、和音の性格を決める中心的な材料になります。2度と7度は不協和音程で、緊張やぶつかりを感じさせます。特に半音6つの増4度(=減5度、三全音)は最も不安定な音程とされ、中世から避けられてきました。のちに「音楽の悪魔(diabolus in musica)」とも俗称されますが、この呼び名が文献に現れるのは18世紀以降のことです。ただし不協和は「悪い響き」ではありません。緊張した音程が安定した音程へ移りたがる力こそが音楽の推進力で、この解決の型が終止形の正体です。
転回音程と音程の足し算
2音の上下を入れ替えてできる音程を転回音程と呼びます。ドの上のソ(完全5度)をひっくり返してソの上のドにすると完全4度になるように、元の度数と転回後の度数は足すと必ず9になり、長は短に、増は減に入れ替わります(完全は完全のまま)。この対称性を知っていると、覚えるべき音程は実質半分で済みます。また音程は積み重ねて考えることもでき、長3度の上に短3度を重ねると完全5度になる — この「3度の積み重ね」が和音、とりわけ三和音の構成原理そのものです。
音程が組み立てるもの
音程は理論の各所で部品として働きます。全音と半音をどう並べるかの設計図が音階であり、3度を積んだものが和音、そして最も重要な完全5度の関係だけで全部の調を一周につないだ図が五度圏です。旋律を聴き取って楽器で再現したり、楽譜を初見で歌ったりする訓練(ソルフェージュ)も、実質は音程を聴き分け・歌い分ける訓練です。2音の隔たりというシンプルな概念が、音楽理論全体を貫く共通のものさしになっています。
試問
鍵盤の上で、金色の基準音シ(B)と、押した鍵の2音が同時に鳴ります。弧の下の点は、2音の間にある鍵(半音)の数を表します。ド→ソやレ→ラのように、よく溶け合う澄んだ響きの音程を「完全5度」と呼びます。
鍵盤を押すと、金色の基準音シとの2音が鳴ります。弧の上の数は、2音の間の半音の数です。
